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夏休みということもあってか、図書館にはあまり人がいなかった。おかげで周りの目を気にせずに、気になる分野の書棚で背表紙に指を這わせながら、どんな本が並んでいるかをじっくり見ることができた。
どれくらいそうしていただろう。ふと気がつくと、後ろをついてきていると思っていたジュノンくんがいない。
そろそろ他のところにも行きたいし……と思いつつ彼の姿を探したら、窓際の1人用読書スペースに、やたらと大柄の人がこぢんまりと座っていた。
(……猫背でも雰囲気あるなぁ……)
窓から差し込む日光も後押ししてか。
スラッと伸びた指で持つ本に視線を落とす姿は、自然と目を引く。
そっと近寄って、何を読んでいるのかと手元を覗けば、古い画風の漫画だった。誰もが知っている、つぎはぎだらけの天才医師の話だ。
「…………ブラックジャック?」
「、ああ。漫画これしか置いてなかった」
白い指がページを捲りながら、ゆっくりとジュノンくんの目がこちらを向く。
「大学の図書館だしねぇ。懐かしい」
「読んだことあんの?」
「小学校の美術室に置いてあったの」
「へえ」
ジュノンくんの隣の椅子を引いて座る。
開かれたページの台詞を目でなぞりながら、小さい頃の思い出を頭に浮かべていた。
「こっちが絵描いてる隣で、舜斗がずっと漫画読んでた気がする」
「はっ、想像つく」
「ふふっでしょ」
「ミヅキだけ真面目に授業受けてる感じが」
「ああ。ははっ、うん」
舜斗も不真面目なわけではないんだけど、好きなものとそうじゃないものへの熱量の差が凄まじい。私も好き嫌いははっきりしている方で、ただ、勉強と思えばなんでも集中してやる方だ。
「見終わった?行く?」
「…………あ、うん」
昔の2人を思い出していれば、漫画を閉じたジュノンくんにそう言われて頷く。すぐ後ろの書棚に漫画を収めながら、「折角なら体育館とか学生ホールとかいけば?」と伺ってきた。
「いいん?もうお昼やし、あんま見学に付き合わせてもあれかな思って」
「その為に来たんでしょ。遠慮する事なんてないと思うけど」
「…………ほなもうちょっと見てまわりたい」
「ん。」
歩き出したジュノンくんに並ぶよう小走りをすれば、「それとも早く昼飯食いてえの?」と鼻で笑われた。「そんなんちゃうって!……まあでもお腹は空いた……」と答えれば、だよなぁと深く頷く。
時刻は12時半。
ランチを考えるにはちょうど良い時間を越していた。
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白(プロフ) - ゆきさん» わーっ、嬉しい🥰 特別な立ち位置にいるシュントくんがこれからどんな活躍をするのか…他のメンバーがどのように食い込んでくるのか、楽しみにしていただければと思います。 (2023年4月7日 23時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - 珠菜さん» まとめて更新するとなかなか早いですね笑 今後はどんどん不定期になっていきそうな予感です…次回もお楽しみに! (2023年4月7日 23時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 新しく更新してもらえるたびに、テンション上がってしまいます!!更新チェックが最近の毎日の日課にっています(笑)今回のシーズンは改めてシュントの関係が今まで以上に主人公にとって大きいものだなぁと感じてドキドキもしてます (2023年4月7日 12時) (レス) @page50 id: f1ac1c79d7 (このIDを非表示/違反報告)
珠菜(プロフ) - もう続編なんですね!!早い!!リルティングの方とはまた違った楽しみができて嬉しいです🥰次も楽しみにしてます!! (2023年4月6日 19時) (レス) @page49 id: 93515d92f9 (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - そうまなさん» ありがとうございます!時期的にはまーぜるくん達はまだまだ先になりますが…いずれ😳 リルティングアワーのほうが先に登場するかもです(小声) (2023年4月6日 18時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白 | 作成日時:2023年3月21日 18時