ミュージックアワー【BE:FIRST】

1-1 オープンキャンパス ページ11

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ジュノンくんが指定した時間の5分前に駅に着いた。東京で行動するようになってからスマホにインストールしたモバイルSuicaに、2000円をチャージする。




(ここから最寄りまでいくらなん？最寄りから直帰？ちゃうか、一回事務所寄るから……2000円あれば足りるやんな？)


「…………なに百面相してんの」

「わっ！」




切符売り場の前でややこしい路線図を眺めていたら、不意に真後ろから声をかけられた。驚いて振り返ると、呆れた顔のジュノンくんがいて。




「おはよう！」

「おはよ。なに、切符買ってないの？」

「買ったよ。交通費合計いくらかなと思って」

「アプリで調べたらいいじゃんそんなの」

「あ、ほんとだ」

「はあ？」




“馬鹿じゃないの”という思いが彼の顔から滲み出ている。
ジュノンくんはなんというか、デビューが決まってからだいぶ遠慮がなくなった。

オーディション中は付かず離れずの程よい距離だったから気にならなかったのだが、彼は私に対して結構冷たいのだ。

たまーに凄い冷めた目を向けられるとヒヤッとする。


以前、冗談混じりにレオくんにその事を話したら、レオくんは『それが癖になるのよ』と言っていた。玄人だと思った。




「午前の説明会間に合うかギリ。行こ」

「うん。……あの、乗り換えがいまいちよく分かんなくて……」

「東京もん舐めんな。ついてこい」

「頼もしい、！」




視線は冷たいけど、こうやって休みの日にわざわざついて来てくれるところもあるから、根本は優しい人だと思っている。(……きっと。)(日高さんからの頼みを断れなかっただけかも)







＊






飯田橋駅の改札を抜けて地上に出ると、大学の案内が目に入った。「H大行くの初めてだわ。緊張する」と、全然緊張しているようには見えないジュノンくんが、自動販売機でお茶を買っている。




「なんか飲む？」

「ううん」

「………買っちゃったからあげる」




そうやって押し付けるように渡してきたのは、なっちゃんのリンゴ味。ううんって言ってるのにボタンを押してませんでした？今。




「……ありがとう、」

「これ道どっちだ」

「、待ってマップ開く！」

「俺地図読めねーから」

「うふふーっ、Googleマップとお友達だから任せて」




また、ジュノンくんが怪訝そうな顔をする。
いやいや“お友達”っていうのは比喩ですやん。




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