ミュージックアワー【BE:FIRST】

0-1 プロローグ ページ1

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THE FIRSTの終結から早1ヶ月を過ぎて。つい先日、朝の情報番組で放映されていた特集コーナーも最終回を迎えた。

そんな2021年8月下旬の某日。




「やばい、全然終わらん…」




ここに頭を抱えて机に顔を伏せる女子高生が1人。
クーラのよく効いた教室で、夏休みだというのに制服姿で"夏期講習”という名の補修を受けている彼女。
名を踊家Aという。


つい数ヶ月前まで、大阪府内の高校に通うごく一般人であった彼女は、この度 “1人受かるかどうか” の狭き門を怪物のごとくこじ開け、BE:FIRSTの紅一点メンバーとなった。





のだが、




(3年の夏休みに出す宿題量ちゃうやろ〜っ！)




華々しい結果と、渋い現実は同居している。

元々学年で5位内をキープするほど成績優良生のA。しかし、オーディション参加のため通算1ヶ月間ほどカリキュラムに参加しなかったことで、急遽特別対応で期末テストの赤点取得者を対象としたこの夏期講習に参加する事になってしまったのだ。




「踊家さんでもそんな事になるんやねー」




のんびりとした口調でAに話しかけてきたのは、こちらは正真正銘の赤点が理由で夏期講習に参加しているクラスメイト。

明るい金髪の彼女は、ギラギラの見た目とは裏腹にふんわりとした性格で、THE FIRSTの放映前後で全く態度の変わらなかった稀有な存在だ。名を“なゆりちゃん”という。




「宿題終わる気せえへん」

「わかるー。今日もこれから東京なんやろ？大変やなぁ……あ、ここって何？」

「……アクチンフィラメント」

「流石！ありがとぉ。文系志望なのになんでも出来るやん」




なゆりちゃんのプリントはまだ半分も進んでいなくて、自分より全然やばそうな状況をAは内心(なんでこの人こんな落ち着いていられるんだろう…)と不思議に思った。






鐘の音と共に「プリント提出した人から終わりでええでー」と、ファイルで顔を仰ぎながら伝える教師。Aはシャーペンと消しゴムをペンケースに収めると、リュックに宿題とまとめて押し込んだ。




「もうすぐ行くん？」

「うん。一回家帰るけど」

「新幹線何時なん」

「16時やったかな……」

「間に合うんそれ」

「待ってな、あかんかも」




慌ててスマホでEXアプリを開いて、予約の新幹線を確認する。スタッフが事前に予約してくれていたのは、16時45分新大阪駅発ののぞみだった。

ここから家までは自転車で10分、家から新大阪駅までは30分。現在の時刻は15時半。……全然間に合うな、と一息ついた。



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