九重世人の相棒 2 (ページ8)

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48 繋がる証拠 (志摩side) ページ8

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貴『この事件解決したくないです。』

そう言ってポロポロと
こらえきれなくなった涙をこぼし始めた。

俺は、そんなAの頭を
不器用に撫でることしか出来なかった。

ソファーに座らせ、温かいミルクティーを淹れた。

志『ずっと、ここにいるから。
　お前が話せるようになるまで、隣で待ってる。』

隣に座り、震える背中をさすって言う。

…どのぐらい経っただろうか。

Aが胸元から取り出したのは、十字架のペンダント。

貴『伊吹さんにも話した通り、長崎には沢山の教会が
　あるし、クリスチャンも多いです。日曜日には
　ミサがあって、教会で色んな話も聞きます。』

貴『昔の日本では度々、
　多くのキリシタンが殉教しました。
　色々な拷問があったんですが、その中に
　 "手の指を切る"っていうのもあって…。』

貴『 "この人は人間に有らず。獣である。"そういう
　意味が込められていたんです。』

貴『…キリスト教は "赦し" の宗教。…堀内は最後、
　犯人に何を懺悔したんでしょうね…』

Aの話で
点々とした疑問が1つに繋がってしまった。

貴『…志摩さんが誰を疑ってるかくらい、私には
　わかります。何を疑問に思っているのかも。』

貴『どうしてああいう殺し方をしたのか。志摩さんは
　それだけが分からなかったんですよね？
　 …私はそこに込められた意味を知ってた。
　本当にただ、それだけなんです。』

自分だけが持っている鍵が、大きすぎるということ。

その真実を話すことで、傷つく人がいるということ。

あの時のAは
その狭間で揺れ、苦しんでいたのだろう。

志『…話してくれて、ありがとな。』

震える声を絞り出して話してくれた
Aの肩を抱いて応えた。

自動車整備工場に居る今も
1人でいると昨夜のAを思い出してしまう。

今、動機を立証する証拠が確定した。

あとは今、AがUDIに持っていっているモノの
鑑定結果に掛かっている。

伊『え～？…電話掛けてくんの初めてじゃね？』

俺は今から、伊吹の家へ向かう。