【文スト】幸せ恐怖症 vol.3《条野採菊》

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「君、少し前にポートマフィアから狙われてなかった？」


「………な、何故それを」




唐突なキーワードに声が掠れる。

膝を折り、此方を覗き込んだ太宰さんから思わず1步距離を取った。そんな私の行動に彼は「やっぱり」と苦笑を浮かべた。





「世間は狭いものさ。特務課の知人が、とある資料を見ては頭を抱えていたんだ。何気なく覗いてみれば、君の異能や身辺調査の結果が書かれていたよ。ポートマフィアに狙われている事も、今は軍警預かりになっている事も、しっかりね」


「それ明らかに個人情報ですよね？！見ちゃダメじゃないですか！！」


「あからさまに頭抱えて呻く彼が悪いのだよ！そんな反応見たら、気になるじゃないか！！」


「責任転嫁しないでくださいっ！」




ぎゃんぎゃんと吠えるように言い争う2人を見ていたら、此方の気が抜けた。

流石は武装探偵社。広い人脈を持っているな、と落としどころを決め思考を放棄した。これ以上考えたらダメだ。


少し間を置いて、態とらしく咳払いした太宰さんが「それで、」と続ける。




「大丈夫だった？こうやって自由に外出できてるという事は問題ないのだろうけど」


「夜道で一度襲われましたが、運良く助けて頂きました。それ以来は特に」


「襲われたんですかっ？！真っ黒い殺人鬼とか真っ黒い獣とか真っ黒くろすけじゃありませんでしたか！？」


「同じ人物の事しか言ってないよ敦君」


「え、えっと…最初は黒服の方でしたが、、重傷にまで追い詰められたのは帽子を被った橙色の髪の方でした」


「げっ…！よりによって中也かぁ…。重力の餌食にならなかったようで何よりだよ、本当に」


「あはは、＜猟犬＞の方が近くにいてくれて助かりました」



猟犬、という言葉に太宰さんは僅かに目を見開いた。





「君を囲っているのはあの＜猟犬＞部隊かい？」


「囲われてる訳では、無いと思いますが…よく基地の方にお邪魔してます」


「猟犬……？」


「軍警お抱えの有能な特殊部隊だよ。全員が強力な異能者だし、身体強化手術も受けている。彼らに追いかけられたら一溜まりもないね」




ｷｮﾄﾝとしていた中島さんの顔が一瞬にして真っ青になる。

近付いていた筈の距離が物理的に開いた。


「え、……」と思わず声を漏らせば、勢いよく首を横に振られてしまった。




「随分と厄介な連中に捕まったね。死なせてくれない、例え死んだとしても離してくれないんじゃない？」



「ねぇ？」と太宰さんが悪戯っぽくﾆﾔﾘと笑う。

刹那、視界が真っ白に染まった。











「勿論。手放す訳がないでしょう」




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