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「そういえばお仕事は大丈夫なんですか？」
「緊急の事件が無ければ平気です。脅……直談判で休みを捥ぎ取りました」
「……言い換えても意味は変わらないような」
「こういうのは気持ちが重要なんですよ」
＿＿＿＿＿＿＿＿なんて。
他愛もない話をしながら、彼の手に従って歩く。
途中でさり気なく恋人繋ぎに変わり、さらに近づいた距離には未だ落ち着かない。
……そわそわしている私の反応に笑っていたのは見逃してないから。ちゃんと根に持ってやる。
「……人が、多いですね。壁にしか見えません」
「大晦日ですからねぇ。Aさんの背丈では人に埋もれてしまいますし、迷子になったら探すのに苦労しそうです」
「条野さんは背が高いですから良い目印になりそうですね」
「実は鐵腸さんの方が高いんですよ＿＿＿ｯと、着きました」
そう云って条野さんは足を止めた。
連れてこられたのは綺麗な星空、月を揺ら揺らと映した海。
街の喧騒とは違った、落ち着きのある単調な波の音が等間隔に響く。
「海……」
「此処まで来れば流石に静かですね。実は1つ、Aさんに聞きたいことがあって」
態々連れ出してすみません、と苦笑した。
周りに何もない海にまで来るとは。余程誰にも聞かれたくないこと、なのだろうか。
「以前、基地の方で療養していた時期があったでしょう？
……その時に貴女は『死んでしまいたいと思うくらいに嫌気が差した』と云っていた」
ﾄﾞｸﾘ、と心臓が音を立てる。
そうだった。つい先日の私は、静かに眠れる日を夢見ながら、ただぼんやりと生きていた。
そんな何にも諦観していた私を変えたのは、他でもない貴方だ。
「私は、貴女を死なせたくない。でも最後には、貴女の意思を尊重するでしょう。導く役目として聞いておきたいんです。今の、貴女の意思を」
彼にしては珍しく、不安そうだった。
意思を尊重する、という割には縋るように手を握られて。
矛盾とまではいかないものの、ちぐはぐな彼の表情に、行動に思わず笑みが零れてしまう。
「んふ、ふふｯ…！」
「……何か、面白いことでも？」
「だって、迷子の子どもみたいに不安そうで、悲しそうな顔をしていたものだから。……私は、嬉しいんです。手を取って貰えて」
私は握られている手を持ち上げて、両手で彼のそれを包み込む。
骨張っていて、大きくて。それでいて繊細な手。
込み上げる愛おしいという気持ちに、存外私も絆されているのだなと嗤った。
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黒灰白有無％(プロフ) - 初期の頃に読ませて頂いて私得の方読ませて頂き此方の名が出て久々拝読を試みたら完結状態で吃驚です.未拝読の所も読ませて頂き再び拝読出来た事と物語の感動で感涙です!!文章が綺麗ですし迚も面白くて大好きです又1~読ませて頂きます.是からも蜿々と応援しています！！ (8月19日 8時) (
レス) id: 00e0ebd256 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 向日葵さん» コメントありがとうございます！条野さんメインの夢小説良いですよね(о´∀`о)中々数が少ないのが残念です…なので自己供給してます笑。不定期更新ですが、これからも宜しくお願いします！ (2023年3月5日 21時) (レス) @page29 id: 64577bab6f (このIDを非表示/違反報告)
向日葵 - めっちゃ好みです！猟犬(条野メイン)の小説大好きなんですよ!ありがとうございます。これからも応援させていただきます!！ (2023年3月2日 16時) (レス) @page29 id: bf5f5c7f70 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - mさん» コメントありがとうございます！夢小説、となるとキャラの性格を上手く当てはめる事は必要不可欠ですが大変な作業ですよね…。私も意識しつつ書いているので、そう言って頂けて嬉しいです(о´∀`о)不定期更新となってしまいますが、これからも宜しくお願いします！ (2023年3月1日 23時) (レス) @page29 id: 64577bab6f (このIDを非表示/違反報告)
m - 初コメント失礼します。とても綺麗な文章と構成に感動しました。上手くキャラの性格に合わせている所には尊敬しかなく、すべてが本当に好きです。どうかお身体にはお気をつけて楽しんでご活動続けてくださると嬉しいです。これからも心から応援しております。 (2023年2月24日 18時) (レス) @page27 id: 6abbe396c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ハル | 作成日時：2021年12月9日 0時
