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未だ思い通りに動かせない足が縺れ、身体は為す術もなく前に倒れる。
ぶ、ぶつかる……ッ!!
目を閉じて、襲われるだろう痛みを覚悟した。
「___大丈夫ですか?」
想像よりもはるかに軽い衝撃と共に、何故か間近で条野さんの声が聞こえた。
恐る恐る目を開ければ、視界いっぱいに彼らの着る軍服の色。
私の身体を支える存外逞しい腕に、仄かな優しい香りが私を包む。
「あ、れ……」
「全く…。せっかく回復傾向にあるのですから、気を付けてください」
如何やら、彼が咄嗟に受け止めてくれたらしい。
ゆっくり身体を起こし、鐵腸さんの方へ戻ろうとすれば、後ろから手首を掴まれる。
「?……如何しましたぁッ!?」
グイッと後ろに引かれ、よろけた処を抱き上げられた。
突然高くなった視界に戸惑い、思わず条野さんの軍服を掴む。
視線の高さがほぼ同じとなった鐵腸さんの方を見れば、無表情なお顔とこんにちは。
「此処からは私が送りましょう。鐵腸さんは早く戻ったらどうです?」
「……仕返しか」
「勿論、それ以外に何がありましょう」
そんな会話の後、無表情な鐵腸さんと微笑を浮かべた条野さんは無言で見合っていた。
条野さんの腕に抱かれたまま暫くの間、私はその光景を見ているしかない。
……条野さんの真っ黒い微笑みが怖いな←
「………A。すまないが、条野に送ってもらってくれ」
謎の戦いに敗北したのか、鐵腸さんは顔をむすっとさせて、私たちの横を通る。
「病室に帰ったら、冷蔵庫を覗いてみるといい。ではな」
去り際にくしゃりと私の頭をかき混ぜ、来た道を引き返していった。
外套を翻して颯爽と歩く彼の姿を見つめていると、条野さんの不機嫌そうな声が聞こえた。
「_____そんなに鐵腸さんの方が良いですか?」
条野さんはもう片方の手で私の顎を掬い、お互いの顔が合う様に固定した。
目と鼻の先にある彼の顔は微笑んではいるものの、閉じられている目は全く笑っていない。
近い、近すぎるッて……ッ!!
私は条野さんの拘束から逃れようと、肩口に置いていた手を突っぱねてみた。
が、彼が逃がしてくれるわけもなく、結果は私を抱く腕の力が強まっただけ。
「あまり暴れないでください。この高さから落とされたくないでしょう?」
「……リ、リハビリ中なんで!歩かせてください…!」
「では今日は御終いです。あまり根を詰めすぎても良くないですから」
「くッ…!」
〇
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オタク - コメント失礼します!まだ一編目しか読めてませんが、すでに沼にはまってます!!言葉選びとか、キャラの口調をしっかりとらえてるところももう、すごくいいです!素敵な作品をありがとうございます!二、三弾目もじっくり楽しみながら読ませていただきます! (10月15日 6時) (レス) @page50 id: 7a68ba3320 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - ショートケーキの赤いヤツさん» 同じく刺さってます笑、彼のS属性(笑)を薄っすらと出しつつグイグイ行って貰おうと思います!これからも宜しくお願いします(*^^*) (2021年8月21日 23時) (レス) id: 64577bab6f (このIDを非表示/違反報告)
ショートケーキの赤いヤツ - 条野さんのS感ヤバいですよね……刺さる←条野さんが推しなので更新楽しみにしています! (2021年8月21日 16時) (レス) id: 0727e3cb02 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - うり太郎さん» コメント有り難う御座います!そう云って頂けて嬉しいです(*´ω`*)更新途中ですが続編も是非宜しくお願いします!も (2021年8月21日 0時) (レス) id: 64577bab6f (このIDを非表示/違反報告)
うり太郎(プロフ) - ヤバい・・・・・・!尊い・・・・・・!こんな神作品を作れる作者様マジでリスペクトします!!今読み途中なんで今すぐ続き行ってきます┗(^o^ )┓三 (2021年8月19日 23時) (レス) id: ccbe99882f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作成日時:2021年1月7日 23時