【水溜りボンド】幸せまで

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トミーside







「今までさ、俺あんまり何も本気になれなかったんだよ。

高校も中学も何でも中途半端で、楽しい事なんかなんもなくて。


でも頭悪くても頑張って勉強して、頭いい大学行って、サークルも自分で本気になれそうなとこ見つけて。


そこがたまたまお笑いサークルで、そこでたまたまカンタと出会って、そこからたまたまカンタとコンビ組んで、それで今まで『水溜りボンド』っていうコンビでやってきた。


動画では初めて本気になれた。


最初の方なんか全然見てくれる人はいなかった。
でも徐々に増えてって、チャンネル登録者が一人増える度にカンタと「やったな」って言ってた。


俺らが有名になっていくうちに色んな事が変わった。

街に出たら声を掛けてくれる人も増えた。

テレビにも出た。




でも、カンタは1ミリも変わってない。

毎日面白いネタ考えて、毎日面白い事言って、毎日面白い動画出して。


3年前と全然変わってない。




カンタと出会って、俺はたくさん変わったよ。

ハワイなんか行きたいなんて思った事もないのに、カンタとならいいかなって思うようになった。

マラソンなんか面倒臭い。今でもそう思ってるけど、カンタがゴールで待っててくれたから42,195kmも走れた。

機械なんか使えないくせにサブチャンネルを編集し始めた。

ゲームなんか興味なかったのにスマブラだけはできるようになった。





俺はこんなに変わったのに、カンタは変わってない。






俺が変われたのはカンタのおかげだよ。


動画が伸びたのもカンタのおかげだよ。




だから、ありがとな。





今まで……ありが、とう」








大粒の涙がカンタの顔を濡らす。







カ「おれ、も……ありがと、う」








涙で濡れた顔が、いつもの笑顔でくしゃっと笑った。









そして、カンタは目を瞑った。

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