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「お久し振りですね。」
彼女は、そう言ってぺこんと頭を下げる。
「せやな。あれから、三年、いや二年？」
「二年、ですかね。」
訥々だが、会話を続ける。気まずさはあったが、そのまま立ち去ろうとは思わなかった。
「あのまま、部をやめてもうたやろ。どうしてるか気になっとったけど、その制服着てるってことは、ちゃんとしとるんやな。
俺がそういうと、顔。上げて真っ直ぐ見た。
「いや、先輩目え悪いんか、アホなんかどっちかでしょうよ、」
そう言った。表情も笑顔ではあったが、目は笑ってなかった。
「ずいぶんな言い方すんな。」
俺もいきなりのアホ呼ばわりに憮然とする。
「すみません。けど、ちゃんとなんてしてないし、ロクな人生送ってないですよ、」
「ロクな人生って、たかだか１６歳の使う言葉やないぞ。」
俺は、彼女の隣に腰を下ろした。
そして、胸ポケットからタバコを出して咥える。
彼女はその箱を手に取ると、１本取り出して火をつける。その慣れた仕草に少し驚いた。
彼女は箱を取ると、フッと笑う。
「結構キツくありませんか。」
彼女が手にしてるのは、俺のタバコ。ラッキーストライク。
「そうかな。もう慣れたしな。」
彼女は、自分でマッチをするとスッと火をつけた。
慣れている仕草だ。
「意外やな。せやけどそんなん停学コースちゃうん？」
「せやから、ロクなもんやないんですって。」
そう言ってスカートのポケットから、タバコの箱を取り出した。
「マジで吸ってんのやな。はったりや飾りやなしに。」
彼女の銘柄もラークと、なかなかに渋い。カッコつけてる女の子が吸うようなのではない。
二人して、タバコを吸っている間は無言だった。けど、気まずさはなく、むしろ心地よかった。
二本目で自分の箱から取り出す彼女にライターを渡す。受け取り方も、怖々とライターに触れるのも、さっきの手慣れた様子と真逆で、ついつい笑ってしまう。
「何、めっちゃおっかなびっくりやんな。」
「慣れてないんですって。ライターは」
百円ライターを店で堂々と買える度胸まではまだなくって、と笑う。
「アホですよね。」
「でもタバコは堂々と買える？」
「まさか、自販機ですよ。しかも私服ん時にしか。。。。もう、笑わんといてください。恥ずかしいんですけど」
悪ぶっている。ロクでもないって自嘲気味だけど、かわいさハンパない。
そして、火をつけてあげると、初めて笑顔がのぞいた。
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作者名：紫音 | 作成日時：2021年10月19日 0時
