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月〜 ページ7

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私が珈琲を飲み干した時、
ラパンさんが珈琲に
一度も口をつけていないことに気が付いて
「どうぞ」と勧めると慎重に口をつけ
次のような順番で食べていった。


・プレーンメロンパン
・メープルメロンパン
・シナモンメロンパン
・紅茶のメロンパン
・キャラメルメロンパン
・チョコチップメロンパン
・抹茶のメロンパン
・苺のメロンパン
・チョコレートメロンパン


どれも感想は「美味しいです」とだけ述べた。

私はそれだけでも胸から
喜びが溢れるほど嬉しかった。
それは「美味しい」という言葉が
一番素直で伝わりやすいと思っているからだ。


私は一口ずつ欠けてしまった
メロンパンを紙袋に詰めて
マスキングテープで止め、

「Merci」と書いて珈琲を飲み終わった
ラパンさんに差し出す。


『タダで貰ってくださいな』
「いや、そんな申し訳ないです」
『全然いいですから
またいらしてください』


私がそう言うとまだ納得していないような表情で
渋々受け取り、深く礼をすると
「また来ます」と言い席を立った。

入店した時と同じように
マスクで顔を覆い、帽子を被り直して
周囲を警戒するように店を出た。


ラパンさん、月から初来店。
珈琲は砂糖なし。と。







十七時に店の前の信号旗を下げ
明日の販売に備え、生地の仕込みをし、
冷凍庫に入れれば一日の仕事が終了する。

それから抜け殻のように
ソファーで眠っていたら
帰ってきた弟が夕飯をねだるので
外食をしようと提案し、二人で外に出た。


『なにがいい?』
「パスタとか」
『いいね』


この会話だけでもウヌが
大人びたように感じた。

隣を歩く私の方が
子供っぽく見えているんじゃないか。
なんだか少しだけ悔しかった。

近所のパスタ屋さんに入って
ウヌは明太子のクリームパスタを、
私はトマトとモッツァレラチーズの
パスタとワインを頼み、

店主であるイタリア人の
旦那さんと世間話をして
四〇分ほどで家に帰った。


『そう言えば今日ね
新しいお客さんが来たんだよ』
「へぇ、珍しい」


それぞれお風呂から上がって
濡れた髪のままソファーに並んで座り、
自家製のアイスクリームを頬張る。

牛さんの濃厚なのに
後味がすっきりな牛乳と
ブルーベリーを絡めた(こだわ)りの
アイスクリームだ。

ウヌは私の話に興味があるのか
スプーンを口に加えたままこちらを向いた。




春風→←ラパン



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あんず(プロフ) - なんか憧れるパン屋さんで、すごい行きたくなりました!、 (2018年6月2日 0時) (レス) id: c19e297b48 (このIDを非表示/違反報告)
Eill Rie(プロフ) - 楽しく読ませていただきました。メルさんの小さなパン屋さん、実際にあったら行ってみたいものです^^ (2018年5月21日 12時) (レス) id: 3073d54efc (このIDを非表示/違反報告)
早苗 - 名刺とお店の絵凄く可愛いです!!こんなお店があったら毎日行きたいですw (2018年5月12日 13時) (レス) id: 9d45fbd028 (このIDを非表示/違反報告)
早苗 - とても面白い作品で大好きです。これからも応援してます! (2018年5月7日 22時) (レス) id: 9d45fbd028 (このIDを非表示/違反報告)

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作成日時:2018年4月29日 21時

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