ココア ページ11
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「こんにちわ」
『あ、こんにちわ』
マスクを顎まで下げてペコリとお辞儀をしたのは、
三日ぶりのラパンさんだった。
つられて私も頭を下げると、
キュリちゃんはサッと私の後ろに隠れて、
ちらりとラパンさんの様子を伺う。
今日のラパンさんは片手に紙袋を下げており、
どうやらお買い物帰りのようだ。
私は片方のマグカップをレジカウンターに置き、
もう片方はラパンさんにあげようと思った。
外は風が冷たいから、きっと体が冷えている。
『ココアはお好きですか?』
「あ、はい」
『じゃあこれ、一緒に飲みましょう』
ラパンさんの前に差し出して、
椅子に座るように言うと笑って頷いてくれた。
私のココアはラパンさんの手に渡ってしまったので、
マグカップへ手鍋に残ったミルクを注ぎ、
自分用のココアを作った。
再び私の膝に座ったキュリちゃんは、
マグカップをギュッと手に持って、
足をパタパタと交互に揺らしてご機嫌のようだ。
「メルちゃんのココア、おいしいでしょ?」
私の全てを知っているような口調で
キュリちゃんはラパンさんに言った。
ラパンさんはカップから口を離し、
ふわりと優しく微笑む。
「うん、とっても」
そう言ってココアに口をつけた。
きゅっと上がった口角は穏やかで、
私の胸はじんわりと暖かくなって、
目の前の世界がキラキラと輝いた。
「あ、そうだ」
ラパンさんは顔をハッとさせて、
床に置いていた紙袋からお菓子の箱を取り出し、
私に差し出した。バターワッフルだ。
「この間のお礼に持ってきたんです
一緒に食べませんか?」
『ええ、ぜひ!』
この間のお礼とは、メロンパンのことだろうか。
仲良く三人で小さなお茶会をすることになった。
〆
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あんず(プロフ) - なんか憧れるパン屋さんで、すごい行きたくなりました!、 (2018年6月2日 0時) (レス) id: c19e297b48 (このIDを非表示/違反報告)
Eill Rie(プロフ) - 楽しく読ませていただきました。メルさんの小さなパン屋さん、実際にあったら行ってみたいものです^^ (2018年5月21日 12時) (レス) id: 3073d54efc (このIDを非表示/違反報告)
早苗 - 名刺とお店の絵凄く可愛いです!!こんなお店があったら毎日行きたいですw (2018年5月12日 13時) (レス) id: 9d45fbd028 (このIDを非表示/違反報告)
早苗 - とても面白い作品で大好きです。これからも応援してます! (2018年5月7日 22時) (レス) id: 9d45fbd028 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時:2018年4月29日 21時