十八歳 ページ9
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そういえば、十八歳の春。
差出人の彼女に、恋のキューピットを頼まれた。
「A、お願いがあるの」
放課後、オレンジ色の教室で
帰りの支度をしていた時だったと思う。
思い切り頭を下げ、消え入りそうな
声でぽつんと呟いたのは。
「ラブレター。書いてくれないかな」
私は聞こえないふりをして
もう一度聞き返した。
『今なんて？』
「私の代わりにラブレターを書いてほしいの」
のぼせたように赤い彼女の顔を、
私はぽっかりと口を開けたまま見ていた。
唐突すぎて事情が読み込めなかったので、
｢取り敢えず座りなよ｣と着席を勧めれば、
気が抜けたようにストンと腰を落とす彼女。
このままだと熱で溶けてしまいそうだ。
『まず、どうして私？』
「Aの字が綺麗だから。
私の字はあまり綺麗とは言えないし、
書いても書いても素直になれないの」
気が強くて凛としている彼女からは
想像がつかないくらい弱々しい声が出た。
彼女が恋をしている相手は、
サッカー部で爽やかな汗を流している男の子で、
私とも仲がいい男子だった。
だけど、もしこの代筆を受け入れたとして
彼女の恋が叶わなかったら？
そんなの真っ平ごめんだった。
『私が書いたところで
恋が叶う保証はないと思うんだけど』
「それでもいい」
『ソヒョン』
「お願い！」
彼女はソヒョンという名前だった。
泣いて縋るように言うもんだから、
私は断る気が失せてしまって、
一度鞄の奥に沈めたメモ帳を取り出した。
『詳しくどうぞ』
「…ありがとう」
彼女が頬を赤らめながらする恋バナで、
私の頭の中がヴィヴィッドに色付いていく。
とても鮮明な映像が流れ、
ドラマや映画を見るよりも刺激的だった。
〆
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あんず(プロフ) - なんか憧れるパン屋さんで、すごい行きたくなりました！、 (2018年6月2日 0時) (
レス) id: c19e297b48 (このIDを非表示/違反報告)
Eill Rie(プロフ) - 楽しく読ませていただきました。メルさんの小さなパン屋さん、実際にあったら行ってみたいものです^^ (2018年5月21日 12時) (レス) id: 3073d54efc (このIDを非表示/違反報告)
早苗 - 名刺とお店の絵凄く可愛いです！！こんなお店があったら毎日行きたいですw (2018年5月12日 13時) (レス) id: 9d45fbd028 (このIDを非表示/違反報告)
早苗 - とても面白い作品で大好きです。これからも応援してます！ (2018年5月7日 22時) (レス) id: 9d45fbd028 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時：2018年4月29日 21時
