恋をしました【大橋和也】 (ページ32)

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ステージに立っていたのは、キラキラの王子様の衣装を着た大橋くんだった。

凛葉「えっ和也…！？」

藤原「なにやってんねんあいつ…」

皆驚いている。誰も知らされていないっぽい。

…あっ、さっきステージ裏から聞こえてきたのはこのことだったのか…！
王子様役の人がいなくて代わりに大橋くんになったのだろう。

大橋「なんて美しい人だ…貴方の名前は…？」

いつもの大橋くんじゃない。いつもより少し低めの声、シンデレラを見る眼差し、本物の王子様みたいだ。

(かっ…こいい…)

体育館は一瞬の静寂のあと、女子たちの悲鳴に近い歓声が上がった。

ゴーンゴーンと鐘の音が鳴る。

西畑「あっ…ごめんなさい、私帰らないと…！」

大橋「あっ…まって、！」

12時の鐘が鳴り、シンデレラが階段を駆け下りる途中でガラスの靴を落としてしまう。

それでもシンデレラは立ち止まらず、森の中へと消えてしまった…。

大橋「あの方は…いったい…」

大橋くんはシンデレラのガラスの靴を拾い上げ、愛おしそうに見つめた。

(っ…)

多分、その時、会場の全員が大橋くんに見惚れていた。全員の息を飲む音が聞こえた気がする。

場面が切り替わり、王子様たちがシンデレラを探すシーンに切り替わった。

義理の姉「うぅ～ん、入らないわ…」

シンデレラの義理の姉たちがガラスの靴を履こうとするが、入らない。

大橋「…ここが最後の家だったのに…君はどこにいるんだ…」

愛おしい人を探す大橋くんは、まるで本当の恋人を探すみたいに切ない表情をしていた。

すると、舞台袖から、ボロボロの服を着たシンデレラが出てきた。

西畑「シンデレラは私です！」

シンデレラがガラスの靴を履くと、ピッタリだった。

大橋「あぁ、貴女だったのですね」

大橋くんは跪いて長い指先を伸ばし、シンデレラの手の甲にキスをした。

その瞬間、体育館に黄色い歓声が上がった。
綺麗な映画を見ているみたいで、胸のドキドキが治らない。

また場面が変わり、王子様とシンデレラの結婚式が始まった。
周りの人に祝福され、2人は向き合った。

大橋「貴女に出会えたのは、運命に違いありません」

大橋くんの表情がわかる位置に座っているため、大橋くんはシンデレラの手を取り、愛おしそうに見つめているのがわかる。

大橋「私は貴女を」

その時

大橋くんが一瞬、ふっと笑って

大橋「愛しています」

目が合った気がした。