閉じこめたい【時透無一郎】 (ページ44)

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よんじゅうさん。ページ44

むいくんが動けなくなった今ここで私までやられたら、その後の被害を受けるのは民衆かもしれない。

私が殺らなくては。

でも、鬼とはいえ元々は愛する母親だ。

むいくんと同じく、普通に攻撃なんてできない。

どうすれば。どうしたら戦える？

ふと、むいくんと手合わせした時の記憶がよぎる。

例え自分が捨て身になったとしても、あの技なら斬れるかもしれない。

『桃の呼吸……………』

構えをとらず、微笑んでゆっくりと母に近づく。

目を合わせてゆっくり。

お母さん。

何年も探してやっと会えたと思ったら。鬼になってるなんて。

その赤く血走った眼以外は変わってないね。

お父さんとお姉ちゃんが鬼に襲われた時。一緒にいられなくてごめんね。

怖かったよね。

無惨に鬼にされた時はもっと怖かったよね。

視界が揺れる。

腹部に鈍い痛み。

きっと三本ほど針が刺さったのだろう。それでも歩みを進める。

無「A、！だ、め、、！」

針を何本も受けたむいくんが少しずつ近づいてくる気配がする。

スローモーションのようにゆっくり動く世界で母に辿り着き、そっと抱き締める。

お腹の針が食い込む。

『おか、あ、さん、、。』

鬼は私の腕の中でじたばた動く。

もっと強く抱き締めて離れないようにする。

『怖い思いさせてっ、一人にしてっ、ごめんっ、ねっ。

　…最期に逢えてっ、よかっ、たっ。』

鬼の気が少し緩んだ気がした。

でもまだ。まだだ。

『…生んでくれてっ、ありがとうっ、！私の、私のっ、たった一人のお母さんっ……。』

意識が朦朧とする。毒が身体を蝕んでいくのを感じる。

『……大好き。』

そして、できるだけ痛みがないようにそっと、刀を当てた。

＿＿＿＿鬼の頸は落ちた。

その瞬間、足元がふらつき、その場に
崩れ落ちる。

無「Aっ！！、っ！！」

いつの間にか私の側に来ていた彼と共に倒れこむ。

『たおせたっ、！むいくん、っ！』

無「うん、うん、！頑張っ、たねっ。すごいよAっ、！」

＿＿＿時透にしか効かねぇ技だかな！

そんなことなかったですよ宇髄様。

だって、最大の敵を倒せたんだから。

頸を落とされた鬼の瞳からは、一滴の雫がこぼれ落ちていたという。