さんじゅう。 ページ31
糸を針に通し、先を結ぶ。
丁寧に針を布に絡ませる。
無一郎くんの隊服のボタンが外れそうということで久しぶりに裁縫をしているのだ。
彼は今夜も刀を手に人々を危機から守っている。
そんな無一郎くんの姿を想像するだけで自然と笑みがこぼれる。
『今夜もどうか無事で帰ってきますように。』
鬼殺隊は命を落とす覚悟で任務に出なければならない。
帰ってくることが当たり前だと思っていてはならない。
『よし。できた!』
ボタンをつけ終え、自分以外の誰もいない部屋で大きな伸びをする。
我ながら上手くできたと思う。
せっかくだから隊服を部屋に持っていっておこうか。
そう思い無一郎くんの部屋へ足を運ぶ。
『失礼します……』
思い返せば本人が不在の時にこの部屋に入るのは初めてだ。
人間は好奇心に逆らえない生き物で、少しだけならと彼の部屋を探ってみたくなった。
隊服を抱えたまま、机の上にあるものをじっくりと見てみる。
『体力を向上させるための鍛練…。』
どうやら炎柱の煉獄様がまとめている書類で、無一郎くんの鍛練への助言が記されている。
無一郎くんのように強い人でも、自分磨きを怠らないことに感激した。
ふと、机の引き出しから顔を除かせている白い紙のようなものが目に入った。
『これは……写真?
…えっ!?!?』
それは写真だったのだが、私が驚いたのはそれに写っている人に対してだ。
そう、写っていたのは___
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___幼い無一郎くんと私。
いや違う。
幼い“二人”の無一郎くんと私。
三人写っている。
必死に辿る幼少期の記憶。
あれ。何故だろう。
全然思い出せない______。
頭がズキズキとする。
思い出そうとすればするほど何故か睡魔が襲ってくる。
頭痛も治まらない。
明日無一郎くんに聞いてみよう。なんて意識が朦朧としながら考えつつ、深い眠りに落ちた。
ボタンをつけ直した隊服を抱えたまま。
ラッキーパーソン
蜜璃
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作者名:りお | 作成日時:2020年4月9日 20時