姉さん、愛してる。【夏油傑】 (ページ4)

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そこから学校に着くまでの間、いつものように他愛のない話をする。今日はあのドラマが再放送するだとか、スーパーの卵が安い日だとか、今日の体育はバスケだから楽しみだとか、そんな話。いつも通りの日常であった。

『…あ、傑ここの髪はねてるよ』

いつもは身だしなみ完璧な傑。珍しいこともあるものだ。そう思い、はねた髪を触る。少し触っていれば、はねは落ち着き、元の髪型になった。

『ん、これでよし』

「…姉さん。私以外にこういうことしないでね」

『え？あ、うん』

私の知り合いは皆髪のはねなど見たことがないくらいに身だしなみに気を使う。そうそうすることは無いだろう。それは傑も知っているはずなのだが…。地雷かもしれない。計画を少しでも円滑に進めるために言われた通り、傑以外にはしないでおこうと思う。
そんなことを話していればいつの間にか校門近くまで来ていた。途端、辺りがザワザワとし始める。慣れたものだ。

「げ、夏油くん！おはよう…！」

一人の女子が傑に話しかける。少々頬が赤い。弟に好意を寄せてくれているのだろう。このまま上手くいってくれ、なんて思うが現実はそう甘くはない。

「おはよう佐藤さん」

「へ…私の名前覚えてるの…？？」

「もちろん。クラスメイトは全員(・・)覚えているよ」

そう、全員である。ひとりが特別ということはない。皆平等。私以外に特別な人間を見つけて欲しいと日々切実に祈るばかりだ。

「あ、そ、そうだよね！邪魔してごめん！私行くね！」

あぁ待って行かないでもっとアタックして！！
そんな事を思っても、現実は無情である。先程の佐藤さんは去っていってしまった。

「…さて、姉さん。行こう」

『佐藤さん行っちゃったけどいいの？』

「え？うん。何か問題があるかい？」

『…姉さん、クラスメイトとは仲良くして欲しいなぁなんて』

「もう充分仲良くしているよ」

『そっ、か。そっかぁ……』

そんな会話をしながら靴を履き替え、教室へと向かう。幸いなことに双子であるという理由でクラスは分けられた。傑は相当不服だったようだが。

『…傑、離して。教室行きたい』

「嫌だ。はぁ…なんでクラスが別なんだ。やっぱり今からでも先生に抗議をしに」

『会いに来るから！！ね！？』

「…わかった。待っているよ」

『はいはい。じゃあね』

この会話は毎朝のことだ。だが、そこまで離れた教室というわけではなく、傑とは隣のクラスである。