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A｢(全部思い出した今ならわかる)｣
A｢(この日、お母さんは………)｣
病室を飛び出し、急いで階段を駆け上がるA
Aを狙っていたイマジンを引き付け
戦ってくれていた良太郎たちは今、屋上にいる
よりにもよってどうして親を殺した人間が契約者なのか
イマジンを倒したところで何も変わることはないけれど
何としてでも自分の手で決着をつけてやりたかった
どんな思いで何を願ったのかは知らないし知りたくもない
今更憎んだって、過去は変えられない
辛い現実が走り続けるAの背を刺す
A｢(この後死んじゃうんだ)｣
A｢(私が病室に戻ってきたら…死んでいた)｣
この日、Aの母親は
Aが病室に戻らぬうちに命を落とした
たったひとりで、弱音も吐かず、泣くこともなく
最後までAの大好きな母親のまま死んでいった
まだ幼い小学生のAが全てを失った日と言ってもいい
Aの小さな心と体にはあまりにも大きすぎる出来事─
積み重ねられた思いが一気に崩れ落ち
Aが家族に関する記憶を失うきっかけにもなった
A｢(あの時と同じだ、また私は…一緒にいられない)｣
A｢(もっとずっと一緒にいたいのにそれすら叶わない)｣
何度も何度も来た道を戻りかけた
振り返りたくなった
それでも気持ちを押し殺し進み続ける
A｢(前を向かなきゃ)｣
気持ちが不安定になり
思わず足を踏み外し
前方へと倒れる
人ひとりいない階段の上でAは蹲った
A｢(戦ってる音が聞こえる、すぐそこにいる)｣
A｢(私だってちゃんとやる、守りたいものは守る)｣
傷口が開き血が滲む手を地面につけて
一生懸命力を込めて踏ん張った
進んでしまった以上、もうどこにも戻れない
前に進むことしか許されない
A｢動……け、動け、動け、倒れんな馬鹿｣
A｢泣いてたって何も変わんない｣
何かを守るためには何かを捨てるしかない
ずっとそうしてきたんだろう
知らない間に自分で選んだ
時間を守るために1度だけ自分の存在を捨てたのと同じ
A｢待ってるから……行かなきゃ…！！｣
ただ前だけを見て走り出す
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作者名：ぽちゃた | 作成日時：2022年6月26日 11時
