▽ ページ38
･
侑斗が優しいことはデネブがよく知っている
Aに対して開口一番に怪我はないかと聞いたり
屋上から落下したAを助けるために
わざわざ過去の時間にゼロライナーを飛ばしたり
人との関わりを避けてきたようにも見えた侑斗が
少しずつ、どういうわけかAに歩み寄って
好きな星の話をぽつりぽつりと話し出したこともあった
それらは全て特別変な話ではない
それでも…小さな違和感のようなものが感じられた
侑斗｢何がだよ｣
デネブ｢Aが本来いるべき時間って…｣
侑斗｢………………くだらないこと考えんな｣
デネブ｢侑斗…｣
侑斗｢別にどうだっていいだろ、そんなこと｣
幸せそうに笑うAを見る目が
いつもと違っていた
今までずっと侑斗と一緒にいたが
こんなに優しい目で誰かを見守る侑斗は見たことがなかった
デネブが隠されたものの正体に触れようとした途端
侑斗は急に態度を変え、少し小さな声で
ぶっきらぼうに返事を返した
誤魔化したり、嘘をつくのが少し下手だ
侑斗｢もしそれが正解だったとして、何が変わるんだよ｣
侑斗｢……何も変わらないだろ？｣
どこか諦めたように笑っている侑斗
彼が背負うものの大きさは
痛いほどよくわかる
何かを守るためには何かを捨てなくちゃならない
彼はどんどん自分にとって大事なものを捨てていく
迷いなんてない、まるでそれを証明するかのように。
侑斗｢どうせみんな忘れてく｣
侑斗｢俺が何か言ったり何かしたとしても全部意味がない｣
見上げた先にある星空は
悲しいほど眩しくて
侑斗｢何より…今が幸せならそれでいいだろ｣
忘れられたものと
忘れてしまったもの
どちらが辛いかなんて分かるはずがない
侑斗｢世の中知らなくたっていいことだってあんだろ｣
侑斗｢それと一緒だ｣
その言葉はどこか自分に言い聞かせているようにも思えた
今が幸せならそれでいい
この言葉が彼の彼女に対する全てだ
─桜井さんが言ってたの
─離れていても星はいつか必ず巡る
─巡り巡って繋がって、いつか必ず会えるんだって
─結構ロマンチストなのかなぁ、なんてね
離れていても巡り巡って、いつか繋がる
そう信じて
侑斗｢ばーか、そんなことあるか｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 80人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぽちゃた | 作成日時：2022年6月26日 11時
