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A｢そこからはさ、良太郎も知ってるでしょ？｣
A｢だから…今の私がいるのは桜井さんのおかげ｣
手すりによりかかり
遠くを見つめるA
何を思っているのか言葉にしなくても
何となくわかるような、わからないような
Aは時々誰にも見えない何かを見ているような顔をする
A｢どんなに辛くても、苦しくても、悲しくても｣
A｢寂しくても……上を向く｣
そう約束したのだとAは小さな声で呟いた
A｢あんなにしつこく話しかけてきたんだから｣
A｢私だってしつこく探してやるんだから｣
家族がいた時間も
良太郎や愛理と出会った時間も
桜井さんが自分を変えてくれた時間も
全て守りたい
どんなに時間がかかったってどこにいたって
今度は自分がしつこいくらい探し出してやる
Aが戦う理由はそれだけで
誰になんと言われようと、思われようと構わない
それだけは変わらずにいたくて
A｢私は可哀想でもなんでもない｣
A｢辛いことや悲しいことがあったから…出会えた人がいる｣
家族を失った過去や
声を失った過去は
何も可哀想なことではない
確かに悲しかったし、寂しかったし、辛かったけれど
それら全てがあったから出会えた人がいる
どんな過去もAにとっては大事な宝物で
A｢大事な人にはそばで笑っていて欲しいし｣
A｢いなくならないで欲しい｣
風が吹き、Aの髪を揺らす
遠くを見つめていた瞳も大きく揺れ動き
小さな涙が長い睫毛を湿らせる
A｢だから……一緒にいてくれる？｣
大事な人を
大好きな人を
失い続けてきたA
Aが幸せになるためには
1番大事な人がそばにいなきゃ何も始まらない
良太郎｢うん、ずっと｣
A｢そっか｣
それだけ言うとAは笑った
泣いているのに
心の底から幸せそうに笑った
本当の意味でAが幸せになれた瞬間だったのかもしれない
良太郎｢僕もAと同じだよ｣
この先何があったって
きっと大丈夫
良太郎｢僕の方こそ、ずっと一緒にいてくれる？｣
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作者名：ぽちゃた | 作成日時：2022年6月26日 11時
