今と未来、僕と君 16 (ページ29)

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昔からお兄ちゃんのことが大好きだった

お兄ちゃんの存在がきっと私の全てだったんだと思う

強くて、背が高くて、かっこよくて

なんでも出来ちゃう世界で1番の自慢のお兄ちゃん

私には大きくなる頃にはお父さんがいなかったけど

それでも寂しくなんかなかった

お兄ちゃんがいつも大きな背中で私のことをおぶってくれた

肩に乗せて高く高く肩車をしてくれた

思い出せば出すほど、本当に幸せで

A｢それじゃあ……ばいばい、お兄ちゃん｣

そんな幸せを私が壊してしまった

あの時2人で逃げられたら

私がちゃんと助けてもらえていたら

大好きなお兄ちゃんの未来は変わっていたかもしれないのに

後悔してもしきれない

もう一度やり直せるのならやり直したいと思ってる

でもそれはあったことだからやり直しなんて効かない

もう二度と、お兄ちゃんは私の目の前に現れない

｢おう、またな｣

A｢うん｣

｢未来の俺によろしく｣

A｢わかった、言っておくよ｣

｢…………変な男に捕まんなよ｣

A｢まさか｣

不器用だけど優しくて

いつも私のそばにいてくれた

そんな人の妹に生まれてきた私はきっと

世界で1番の幸せものなんだろう

だから尚更、兄や家族の記憶を忘れていた自分が許せなくて

言葉では上手く表せない悔しさに心が張り裂けそうだった

A｢お兄ちゃん｣

｢ん｣

A｢……………またいつか会ってくれる？｣

｢言わなくてもわかんだろ｣

A｢約束だったよね、私が幸せになれる日までずっとずーっとそばにいて守ってくれるって｣

｢そう言えばした覚えはある｣

A｢それ、絶対だからね｣

18歳の私の時間に戻れば

そこには誰もいない

強い正義感を持った頼もしいお父さんも

家族を底のない優しさで包んでくれるお母さんも

大好きなお兄ちゃんもどこにもいない

あの時間にいるのは全てを失くした私だけ

私が幸せになれるその日までずっとそばにいて

守ったやると言ってたはずなのに

どうしてそうなってしまったんだろうね

ねぇ、お兄ちゃん

私まだ誰のお嫁さんになってないんだけど

どういうことなの

｢わかったよ｣

｢絶対忘れない、何があっても｣

いなくなるなんて知らなかったんだ