今と未来、僕と君 16 (ページ27)

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自分に家族はいないだなんて

そんなことは嘘だった

本当は自分にも大事な家族がいて

家族と幸せにすごしたかけがえのない時間が存在していた

他の誰にも変えられない記憶──

A｢本当はずっとずっとこのままここにいたい｣

A｢いたいけど…やらなくちゃいけないから｣

時計の針がゆっくりと時を刻む

Aの止まっていた時計の針も

再び時間を刻んでいく

家族の記憶、今と未来の記憶、全てを繋いで

A｢もう、行かなきゃ｣

この先の未来にも大事な人達は当然いる

それでも

家族ほど大事な存在は他にないだろう

今では失われた大事な家族

ずっとここにはいられない、そう思いつつも

不思議なことに体が動かなくて

頭では理解していても心と体がついてこなかった

離れたくない、ずっとずっとこのまま家族と一緒に

どうしようもない我儘に近い感情を抱いてしまうのは

きっと今まで我慢してきたことが溢れて抑えが効かなくなっているのだろう

今ここで立ち去ってしまえばまた記憶から消えてしまうんじゃないかという不安がAの心を蝕み続けていく

良太郎｢A、本当にいいの…？｣

A｢いいの、だってここには長くいられないでしょ｣

良太郎｢そうだけど…｣

A｢それに早く行かないともう一体のイマジンが過去で暴れ出すかもしれないし｣

ふと何かを考えたのか

顔を背け、勢いよく立ち上がるA

兄から見た妹の姿は

やはり何度見ても大きなもので

まだ幼いくせして妹の立派に成長した姿に

ちょっとだけ感動している

A｢私だけが特別じゃない｣

こんな時間がずっと続けばいいのにと願わずにはいられない

たくさん色んな話がしたかった

あの時のようにまた笑顔で

笑おうとすればするほど上手くいかなくて

涙が出そうなところを何とか耐えて、耐えて、耐え続けて

心と頭がぐちゃぐちゃに混ざってしまいそうだった

私だけが特別じゃない

そんな言葉を口にしたAの横顔は今まで以上に切なくて

A｢どれだけ後悔しても、悲しんでも｣

A｢もう現実は変わらないから｣

ずっとここにいたいけれど

いればいるほど心が傷ついて

相反する感情を同時に心に抱えてしまう

A｢進まなきゃダメなんだよ、きっと｣