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数年前Aはある出来事をきっかけに記憶をなくした
元々Aには父親に関する記憶は一切なく
父親はAが生まれてから数年後、まだ幼いうちに
妻と2人の子どもを残して殉職
その後は母親が女手ひとつで2人の子どもを育てた
ある出来事をきっかけに記憶をなくしてもなくさなくても
父親の記憶がないことには変わりなく
Aからすれば父親との面識はないに等しい
はずだった───
｢未来の、A……｣
母親によく似た優しい目に
父親によく似た頼もしい性格
記憶はなくともAの傍にはいつも家族がいた
A｢信じるの？｣
｢…………俺の…名前は？｣
A｢花嚴柊哉｣
｢ほんとに、ほんとうに…Aなの？｣
時を超えて再会するひとつの家族
まだ幼い娘が長い年月をかけて成長し、目の前に現れたのだ
父親と兄…柊哉は驚きを隠せず
Aもまた自分が助けた少年が兄だったという事実に
大きな驚きを隠せず、内心まだ信じられずにいる
それでもAが柊哉の妹であり
柊哉の歳の離れた妹であることは揺るがない
家族の関係は切っても切れないものなのだ
｢はは……じゃあ、なんだよ｣
｢俺、妹に助けて貰ったってことか？｣
｢変なの｣
歳が離れているからこそ兄としての責任感が強かった
自分が父親となかなか会えず寂しい思いをした分
妹には何不自由なく、寂しさを感じさせないようにと
2人でいる時間が多くなった
この時間の柊哉は知りもしないが
父親が亡くなり、母親1人で子供を育てるとなった時
さらにその気持ちは強まっていった
Aが家族や自分の周りの人間を自分よりも気にかけるのは
そんな兄の姿を誰よりも近いところで見ていたからかもしれない
｢今、何歳？｣
A｢18歳｣
｢そうか、18歳か…今の俺よりも歳上だ｣
A｢身長もお兄ちゃんよりも大きいよ、私｣
｢そりゃそうだろ、18歳と13歳だぞ｣
A｢……………………信じてくれるんだ｣
｢まだ正直実感わかねぇ、でも…疑う理由もない｣
Aはこの先母親が、父親が、兄が
どうなってしまうのか
全てを知っている
二度と会えないと思っていたはずの家族と
こんな形で再会するとは思ってもいなかった
皮肉なことにAが記憶の核であったからこその奇跡
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作者名：ぽちゃた | 作成日時：2022年6月8日 22時
