今と未来、僕と君 16 (ページ16)

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雨が降る中、傘をささずに立ち尽くす

誰かが必死にドアを叩く

A｢私の……本当の……記憶｣

断片的に見ていた記憶が

綺麗に並び替えられ

パズルのようにひとつひとつ繋がっていく

水の中でもがいて、裸足で走り

扉に手をかける

『もう1度お兄ちゃんに会いたいよ』

幼い誰かの声を聞いて思わず足を止める

目の奥から熱い何かが込み上げては

止まることなく流れていく

肩にはあたたかな手が触れて

『忘れないで、思い出してよ』

『あんなに大事だったのに！』

『忘れたままでいるなんてわたしが許さない！！』

頭に触れていた手を離し

息を整える

目の奥から溢れたもののせいで視界がぼやける

『A、こっちにおいで』

名前を呼ばれた

不思議と初めてのような感覚はない

むしろずっとずっと、その時を待っていたんだ

『私は記憶の核でもなんでもない！！』

『私は私』

『私の名前は…──A！！』

ノイズのかかった声が徐々に鮮明になり

ぼやけていた記憶の中にいる人の顔も少しずつハッキリと

形を生して─

A｢私の……名前は……｣

胸の中みんな密かに書き換えたい記憶がある

それでも全てを受け止め、強く前を向く

幸せの星を掴むために、大事な人と巡り会うために

壊れた過去はもう二度と元には戻らない

変えられるとしたらそれは今という時間だけ

書き換えたくても書き換えられない過去の記憶

辛いことは確かにそこに存在した

しかしそれと同時に忘れたくない幸せも存在している

辛いことも、幸せなことも、全てを抱きしめて

過去が希望を与える

『Aは花が好き？』

『うん！きれいだし、かわいいし…それに…』

『Aのみょうじにも"花"がつくから！』

幸せな時間は確かに存在していたのだ

それでも幸せという時間は永遠には続かない

わかっていたはずなのに

受け止めるのに長い長い時間と道のりが必要だった

1度全ての幸せを失った自分に

再び幸せをくれた家族には感謝してもしきれなくて

目の奥から溢れた涙が止まらない

幸せは、思い出は、いつもすぐそばにいて

当たり前すぎて気づけなかった

A｢私の名前は…花嚴A｣

今も目を開けばすぐそばに