今と未来、僕と君 16 (ページ14)

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膨大な数の記憶が次々と頭を過り

Aを苦しめる

こんなに苦しい思いはきっと生まれて初めて

そう思いたいはずなのに

前にもこんな思いをしたような気がして気持ちが揺らぐ

『パパは警察官だから…なかなか会えないの』

『でもね、これだけは覚えていて』

『パパもママもお兄ちゃんも貴方のことが大好きよ』

カレンダーが次々と破り捨てられ

業火に燃やされる

1度燃やされたものは二度と元には戻らない

割れてしまったガラスのように儚く脆い

誰かがAのことを見て嘲笑った

『俺、お前に消えて欲しいって思ってる気がするよ』

『そういう顔してるだろ？』

『お前は何にも守れない、壊すことしかできない』

『自分の立場を考えろよ』

大きな音を立てて波打つ心臓

息が詰まりそうで

視界がチカチカと弾ける

『お兄ちゃん……ごめんなさい…』

『お母さん死んじゃうの？』

『私にはもう何もない、私が全部壊した』

水の中にいるような妙な感覚が続く

少し離れたところから少年の父親がこちらへ向かってくるのを視界の端で見た

断片的な記憶が絶え間なく頭の中を駆けては

目の奥がツンと痛くなって、熱くなる

ジワジワと奥の方から込み上げるものの正体は

触れずとも分かりきっている

｢大丈夫か！？｣

心配そうな顔をしている少年を隣に

急いで駆けつけた少年の父親が地面に座り込み

呆然としているAの肩を強く掴む

瞬間、再び更に強い痛みがAを苦しめた

A｢…………痛い…！｣

風が吹き

花が揺れる

時計の針が時を刻む

腕いっぱいに花を抱えて誰かの元へ駆け寄って

その温もりに触れる

『お兄ちゃんだーいすき！』

『Aのことずっと守ってね！やくそく！』

愛しい人に花を贈る

温もりが花に触れ

やがて笑顔を浮かべ、大事な宝物を抱き上げる

そこには幸せな光景が映し出されていた

一生続くはずだった日常の中のささやかな幸福

しかしその幸福は永くは続かず─

A｢……やく……そく…｣

更に時は進み

温もりが宝物を手放した

少女のそばにあったものは全て音を立てて崩れ

大事な人に手を伸ばす度に消えていく

『行かないで、置いてかないで』

『1人にしないでよお母さん、お兄ちゃん！』