探偵チームKZ事件ノート【立花彩成り代わり】

リサーチ開始 ページ15

若武に追いついて乱れた息を整えていると、若武が勢いよく特クラのドアを開けた。中には既に3人が揃っており、私は後ろの方の机にテキストが置いているのを確認すると、若武の横を抜けてテキストを束ねているビニールテープを、ペンケースに入っている折りたたみハサミで切る。

このハサミは裕樹がくれたものだ。ハサミはかさばるから使えって、誕生日の日にくれたんだよね。私に感謝してるのか、妹の私をかわいがってるのか、借りを返しているのか知らないが、めっちゃ助かる。

あ、あと、鉛筆型のシャーペンもくれた。秀明初等部ではシャーペンが禁止だが、裕樹は中にBのシャー芯を入れてこれを使っていたんだそう。悪知恵の働く兄(仮)だ。

消しゴム部分を押すことでシャー芯が出てき、ペン先は黒くなっているので、鉛筆感を表現出来ている。形は六角形で、本物の鉛筆そっくりだ。

「俺のチャリが盗まれたんだっ！」

思考を変な所へ飛ばし、バッグにテキストをしまっていた手が止まった。……あ、声明文書きに来たんだった。

「若武、乗ってきたの？勇気あるね。どうやって親を説得したのか教えてよ。僕も、チャリ通にしたい」

場違いな小塚の声が響く。案の定、若武は怒ると、ツカツカと小塚の前まで歩み寄り、その手から星座早見盤を取り上げ、何故か私の方に飛ばした。

おそらく、この席には誰もいなかったか、クセで飛ばしたんだろう、アホか。

「立花ッ！」

黒木が叫び、全員がヤバいという顔をする。私はその顔に思わず笑ってしまった。

「ははっ、早見盤飛ばしただけで大袈裟だね。ほら、小塚。パス」

私は早見盤を難なくキャッチすると、ナイスなコントロールで小塚に星座早見盤を投げて返した。若武は私に怪我が無いと分かると、上杉と黒木の机の上に勢いよく手をつく。

「リサーチ開始だ。犯人を見つけるんだ。行こう！｣

上杉と黒木は、しかたがないといったようにため息をつきながら、立ち上がった。

「乗ってくるなよ、新品なチャリなんかに」

「そうだよ。盗られるのあたりまえじゃないか。鍵や盗難防止用チェーンなんか、簡単に開くんだしさ」

ブツブツ言いながら出ていく2人の後に、若武が続き、私が続いた。いちばん最後から、小塚がついてくる。

「くっそ。もう少し早く授業が終わってたらな」

「犯行現場抑えられたのに……って？」

「なんでわかったんだよ」

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