相応 ページ29
外はまさにバケツをひっくり返したような大雨だった
一心にただ走って、走って、走って
たどり着いたのはあの人がよく流れている川だった。
雨のせいで今にも氾濫しそうな、泥で濁った汚い川。
濁流の渦が下流へ流れていく様を見て私はしゃがみ込んだ。
自分の頬を伝う雫は確かに全て雨だった。
当たり前だ。涙なんて出やしない。
だって彼は、朝日奈くんは何も悪くない。
彼の云っていたことは至極当たり前のことだ。
美男の横には美女。
世間一般で定められた当たり前だ。
その逆も然りというのがこの世での一般常識。
美男に醜女も、美女に野獣も有り得ない。
在ったとしたらそれは何故か世間で批判される。
この世で認められた当たり前が与えられるのは美女だけだ。
だって、知っていた
彼の隣に立つべきは、例えば先週彼が口説いていた花屋さんだったり、いつぞやか探偵社を訪ねて来たマフィアさんだったりとか、彼が道端で話していた看護師さんだったりとか。
知っている
あれが当たり前なんだ。
神様から与えられた当たり前で、私には絶対絶対手が届かないものだ。
だから、だから
知っていたから
知っていたから彼の言葉なんて信用出来なかったし、無意識に避けていた。
苦手意識をするようになったのは身体が防衛反応として間違いを起こさない為だ。
彼の隣に居る当たり前になれないから
彼の横に並べる当たり前にはなれないから
だから突き放して罵倒して、信じられない、貴方なんか大嫌いって言葉を投げつけた
本当は信じたかった
本当は誰よりあの人を見てた
それこそ花屋さんよりもマフィアさんよりも看護師さんよりもずっとずっと私の方が彼を見ていた！
けれどそれじゃ駄目だ！
分かってる！分かってるんだよ！
私じゃ彼には役不足だって、そんなこともうとっくのとうに分かってる！
だからって突き付けなくったっていいじゃないか！！
彼を、彼を見て、何が悪い
彼を_____________
彼を愛して、何が
「……何が、悪いの」
「君は悪くないよ」
傘の赤い影とあの人の声が、頭上から落ちてきた
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陽毬 - 釣り合わないから自分は好きではないと言い聞かせる、共感を煽る描写がめっちゃ好きです……。起承転結綺麗にまとめあげているし、普通の本では難しい掛け合いが凄く好きです。ありがとうございましたm(_ _)m (2022年7月29日 3時) (
レス) @page33 id: 22cb640d25 (このIDを非表示/違反報告)
ﾒｰﾌﾟﾙ - 完結おめでとうございます！夢主ちゃんが太宰さんに好きと嫌いを何回も言うｼｰﾝが泣いてしまいました…。私も太宰さんを初めて好きになったときが夢主ちゃんみたいな状態だったので(夢主ちゃん程可愛くはありませんがw)凄く共感できました！素敵な作品を有難うございます！ (2017年6月25日 8時) (携帯から) (レス) id: f962e3e675 (このIDを非表示/違反報告)
無気力感(プロフ) - ゆーあさん» 更新ノロマですみません！｡ﾟ(ﾟ^ω^ﾟ)ﾟ｡谷崎さんは幼馴染みで兄のようなものなので男としては見ていない……という設定です(｀・ω・´)決して谷崎さんに魅力が無いとかいう訳ではなく！！:(；ﾞﾟ'ωﾟ'): (2017年6月18日 21時) (レス) id: bc55e42e35 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーあ - 久しぶりに見たら更新たくさんされててヒャッホオオォォ！てなりました。男の人の家に行ったこと無いとは谷崎さんは男の人とカウントされていないのだろうか。 (2017年6月17日 22時) (レス) id: 5ac2a3e4cf (このIDを非表示/違反報告)
無気力感(プロフ) - Aliceさん» あああすみません！すぐ修正しました！！(´；ω；｀)御指摘ありがとうございます！。゜(´＾ω＾｀)゜。 (2017年6月2日 20時) (レス) id: bc55e42e35 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：無気力感
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年1月7日 19時
