無理心中、お断り【太宰治】

印象 ページ11

目の前に太宰さんの目が来た時、純粋に『綺麗な目だな』と思った。



つり目気味だけど私のように目つきが悪くなどならず、綺麗なアーモンド型で形が整っている。


飲み込まれそうな程深い茶色の瞳は奥に底知れぬ闇を潜めているようで、それがなぜか余計に美しい瞳を際立たせていた。


楽しむような色をした目の彼に少し引き攣った笑顔を浮かべて云い放った



「心中でも何でもしてあげますよ」



すると満足そうに、楽しそうに太宰さんは顔を離して口の片端を歪めて口元に歪な弧を浮かび上がらせた



「……素晴らしい答えだ」



何処かホッとしたのも束の間



私は太宰さんに胸倉を掴まれて乱暴に引き寄せられ、



手付きとは裏腹にとんでもなく優しく唇を押し付けられた



当然、私の唇に




之が人生初の口付け




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第一印象、頭が良い


第二印象、目付きが悪い


第三印象、大人びてる



私が彼女に抱く印象はこんなところだろうか。


頭が良く、顔は整っているものの目付きが少々悪いのでそれをあまり感じさせない。近寄り難い雰囲気が何処かあった。


国木田くんのちょっとしたお気に入りのようで仕事ぶりは中々のものだった。と言っても異能力を持たない一般人の事務員なのでやることは裏方の作業ばかりだったが。


私より後に探偵社に入ったが入社理由は『ナオミちゃんのお手伝いがしたくて』らしい。なんでも谷崎家とはかなりの付き合いらしく、昔家がお隣同士だったとか。確かにナオミちゃんと谷崎くんとの距離は近い気がする。親戚のような感覚なのかもしれない。


本当にぼんやりとしか涼木Aという人間を知らないが、別に特別でもなんでもない彼女のことを私は何故かよく視線で追うようになった。


妙に大人びた雰囲気、あまり変わらない表情、ほんの少し色艶のある仕草


そんな彼女と私が話すことはあまり無い。業務的なこととか、私が振ったちょっとした世間話とか。


けれどそんな彼女がふとした瞬間、楽しそうに笑うのだ



(あ、)




その瞬間分かってしまった


これは病気だと。


永遠に治らない呪いだと。


けれど彼女は私のことを好きではない。そんなことは知っている。とっくに知っている。



なのに、どうして




(苦しい)




こんな苦しさ、厭だ



開放されたい





……死にたい







彼女と死にたい

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