信仰22 ページ25
目を覚ますと、いつの間にか涙がこめかみを濡らしていた
私の頭から張り付いて離れないあの夢を見てしまった時、私はどうしようもなく中原さんの声が聞きたくなる。
中原さんは太宰さんが居なくなった後私をそのまま部下にしてくれて、ボスに直接前と同じような立場に置いてくれるよう掛け合ってくれたのだという。やっぱり予想通りあのままだったら私は情報員として異動していたらしいから本当に中原さんには感謝してもしきれない。
別に情報員が物凄く嫌だったとかじゃない。
ただ、坂口さんの後につくのが嫌で嫌で仕方が無かった。
裏切り者の部下が裏切り者の後につく___
そんなの耐えられなかった。
私は今でも、どうしても坂口さんを許せない。
坂口さんは本気で太宰さんや織田作さんのことを思っていた。
だから許せない。
坂口さんは、話しやすかった。
坂口さんは、優しい人だった。
だから、許せなかったのだ。
けれど、そんな思いが膨れあがって潰れてしまいそうな私を中原さんは掬い出してくれた
『俺がお前をこき使ってやるよ』
その一言で私はどれだけ救われただろうか。
どれだけ、楽になっただろうか。
私は、貴方の役に立てていますか。
迷惑だと分かっていても手が止まらず、真夜中なのに中原さんに電話を掛けてしまった。
意外に早く2コール目で繋がり、『んだよ……』という不機嫌そうな声が聞こえてきた。けれど眠たそうな声ではない。……起きていたのだろうか。
「寝てなかったんですか」
『会議の書類纏めてたんだよ。今寝るところだ』
「そう、ですか……」
『で、テメーの用はなんだ?』
馬鹿にされるだろうか。切られるだろうか。
そう思っていても私は聞いてしまう。
「中原さんは、私を捨てませんか」
『あ?』
「私を、……」
……いや、やっぱり、やめにしよう。
こんなの聞いても何にもならない。第一、真夜中に聞くことじゃない。
中原さんの眠りを妨げるだけだ。さっさと切ろう。
「……すみません、何も」
『俺は太宰とは違う』
電話の向こうの言葉にハッと核心を突かれた気がした。
なんだか無性に泣きそうになってしまったので、私はただ「……はい」とだけ言った。
『用はそれだけか』
「はい……すみません」
『下らねーことで夜中に掛けてくんなアホ』
「すみません……おやすみなさい」
電話を切った後、私はどこかすっきりした気持ちで再び眠りについた。
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FR3kb7ywsKfcSOL(プロフ) - マジでそれな(^^)b (2020年5月29日 23時) (レス) id: e1643b3add (このIDを非表示/違反報告)
真依(プロフ) - それな( ´-ω-)σ (2018年6月2日 8時) (レス) id: 510e192a85 (このIDを非表示/違反報告)
fuwari - 私は治くんが世界一大好きなのですが...その気持ちものすごくわかります(*'‐'*) (2017年3月9日 23時) (レス) id: f502c3a9d5 (このIDを非表示/違反報告)
かなこ - 無気力感さんとは趣味が合いそうです!! (2017年1月22日 16時) (レス) id: 6ab3ea64fe (このIDを非表示/違反報告)
無気力感(プロフ) - 無名の中二病患者さん» 書いててそれ本当思ってました(´^ω^`)wそこはツッコまないで頂けると嬉しいです(o'3')b シ――――!! コメントありがとうございます(*´∀`*)ww (2016年12月23日 21時) (レス) id: a57f2ac744 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無気力感 | 作者ホームページ:
作成日時:2016年11月20日 10時