検索窓
今日:65 hit、昨日:8 hit、合計:809,304 hit

信仰21 ページ24

結局


いくらたっても太宰さん発見の通知など来なかった。



前まで疑いの目を向けていたポートマフィアの連中も今では私に同情の眼差しを向けている。


だって、傍から見れば私は『太宰さんに懐いてる部下』だったのだから。


私はそんな上司に捨てられ、ただ時折来る書類作成の命令に大人しく従うだけの存在になってしまった。


多分次のポストは情報員か何処かかな。ちょうど坂口さんが抜けた場所だ。


いや、……もしかしたら、もう


(私の居場所はポートマフィアには無いのかもしれない)


元々太宰さんが引き取ってくれたようなものだ。その太宰さんが居ない今、私に存在価値なんてものはない。


私には、何もない


スマホを手に取って写真のアルバムを開く。


そして太宰さんが映る写真を一心不乱に削除し始めた。


幾つも幾つもある、太宰さんが笑顔で写っている写真。


私が任務に出掛けた時、中原さんと喧嘩している時、任務成功の祝勝パーティ、……



全部全部、消した



(どうして)



捨てるなら、最初から私に幸せなんて与えないで


貴方から貰った沢山の幸せが、今ではただ私の胸を刺すだけの代物になってしまった


信じていたのに


ずっと、信じていたのに




_______大好きだったのに




写真が最後の1枚になり、それを削除しようと指を動かす。


それは、初めて太宰さんと中原さんと3人で任務を成功させた時にバーで撮った写真だった。


太宰さんはピースをしていて、中原さんは少しぶっきらぼうに、私は片手でピースを作りながら笑顔で。



『写真を削除』



押そうとした。



「〜っ……」



押そうとしたのに


ぼたぼたとみっともなく涙が溢れてきて、スマホの画面に落ちる。


太宰さんの顔が滲んでいく。



「……なんで」



最初から、お前なんかいらないと突き放してくれれば良かったんだ


最初から、道具のように扱ってくれれば何も辛くなんかなかったんだ


ただあなたが



『よくやったね』



そう言って、頭を撫でてくれるから



私に、温もりを与え続けたから



『ありがとう』



あの時の抱擁も、あの時の御礼も、すべては別れの挨拶だったのだ。


そう知っていれば、私はもう太宰さんを離さなかった。


行ってしまうと分かっていたら、あの時手を伸ばして貴方を離さなかった。



『私は何処にも行かない。君を置いてなんか行かないよ』



「……嘘つき」



『じゃあ、またね。Aちゃん』



「嘘つき!!」

信仰22→←信仰20



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (590 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
945人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

この作品にコメントを書くにはログインが必要です   ログイン
感想:  ログイン

FR3kb7ywsKfcSOL(プロフ) - マジでそれな(^^)b (2020年5月29日 23時) (レス) id: e1643b3add (このIDを非表示/違反報告)
真依(プロフ) - それな( ´-ω-)σ (2018年6月2日 8時) (レス) id: 510e192a85 (このIDを非表示/違反報告)
fuwari - 私は治くんが世界一大好きなのですが...その気持ちものすごくわかります(*'‐'*) (2017年3月9日 23時) (レス) id: f502c3a9d5 (このIDを非表示/違反報告)
かなこ - 無気力感さんとは趣味が合いそうです!! (2017年1月22日 16時) (レス) id: 6ab3ea64fe (このIDを非表示/違反報告)
無気力感(プロフ) - 無名の中二病患者さん» 書いててそれ本当思ってました(´^ω^`)wそこはツッコまないで頂けると嬉しいです(o'3')b シ――――!! コメントありがとうございます(*´∀`*)ww (2016年12月23日 21時) (レス) id: a57f2ac744 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:無気力感 | 作者ホームページ:   
作成日時:2016年11月20日 10時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。