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信仰16 ページ19

ふわりと太宰さんの香のようないい匂いがしたけれど何をされているかはすぐに理解出来なかった。


ただ硬直したままの私は数秒後やっと現状を把握し、焦って上ずった声を上げた。



「だ、だだ太宰さん!?
あのっ、これ、あのっ!」



何を伝えたいのかが全く分からない言葉を発しながらとにかく取り乱して私は太宰さんの意思を図ろうとした。けれどやっぱり太宰さんは何も言わない。


ただ静かに、けれど強く私を抱きしめていた。


……太宰さんの様子が、何処かおかしい。


けれど尋ねることすらできない。


あの、と声を掛けることすら躊躇われるような状況の中、少し経ってから太宰さんがようやく声を発した。




「……ありがとう」




そう言ってすぐに私の体を解放するのだが、その太宰さんの表情には何処か陰りがあった。


その陰りが何かは分からない。それでも私は太宰さんの明らかな変化を感じていた。


恐らくその変化は『凶』だ。それも、『大凶』に等しいくらいの。



「いきなり悪かったね」


「い、いえ……」


「それじゃあ」



そう言って去ろうとする太宰さん。


駄目。待って。



「太宰さんっ!」



廊下中に響き渡るような声で太宰さんを引き止めた。


彼は一応止まったが、こちらは振り向かなかった。


どうして。振り向いて。お願い。



「……お、いて……行かないで下さい」



何かを懇願する中、そんな言葉が口から滑り落ちた。


置いていかないで?


……なんで、こんなことを言うんだろう。


分からない。けれど、痛い。


なんでか分からないけど、胸がただ痛い。



「……大丈夫さ」



けれど太宰さんは、こちらを振り返ってニコリと笑った。




「私は何処にも行かない。君を置いてなんて行かないよ」




わけもわからず出てきた言葉なのに、それに対する太宰さんのそんな返答で私は何故か安心してしまった。




「じゃあ、またね


_____Aちゃん」




そう言って、今度こそ太宰さんは去っていく。



もう先ほどの言葉で安心しきったはずなのに、



それなのに



何故か無性に彼を止めたくなった。



行かないでと叫んで、後ろから抱きつきたかった。



その細い腕を引いて、引き止めて____



嗚呼、なんで



それが出来ないんだろう




どうして、それをしなかったんだろう。




言えば良かった




行かないで下さい、と




止めれば良かった




嘘をつかないで下さい、と




……そう、すれば良かった

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FR3kb7ywsKfcSOL(プロフ) - マジでそれな(^^)b (2020年5月29日 23時) (レス) id: e1643b3add (このIDを非表示/違反報告)
真依(プロフ) - それな( ´-ω-)σ (2018年6月2日 8時) (レス) id: 510e192a85 (このIDを非表示/違反報告)
fuwari - 私は治くんが世界一大好きなのですが...その気持ちものすごくわかります(*'‐'*) (2017年3月9日 23時) (レス) id: f502c3a9d5 (このIDを非表示/違反報告)
かなこ - 無気力感さんとは趣味が合いそうです!! (2017年1月22日 16時) (レス) id: 6ab3ea64fe (このIDを非表示/違反報告)
無気力感(プロフ) - 無名の中二病患者さん» 書いててそれ本当思ってました(´^ω^`)wそこはツッコまないで頂けると嬉しいです(o'3')b シ――――!! コメントありがとうございます(*´∀`*)ww (2016年12月23日 21時) (レス) id: a57f2ac744 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:無気力感 | 作者ホームページ:   
作成日時:2016年11月20日 10時

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