半端な君に一円を $Q$【HQ】

一円三十五枚 ページ5

取り敢えず近くのカフェに寄ったものの、なんとなく皆さんの格好が目に入ってしまうんですけど………。






サングラスに帽子にマスクに探偵みたいな服装。





しかも全て四人でお揃いというのが余計に怪しい。









「むしろ目立つぞソレ」






必死に笑うのを堪えているクロ。





いや、もうほとんど笑ってるけど。








「取り敢えず元の服は捨てなきゃと思ったんだよねー」






「すみません。
僕本当この格好嫌です」






「まぁまぁ月島。
割と似合ってるよ」






「すみません赤葦さん。
そのフォロー本当にいらなかったです」






あ、赤葦さんがちょっと傷ついた顔してる………。






「だってもう、服選ぶ余裕とか無かったもん！俺たち、集会から勝手に出て来ちゃったからね！」






「は？」







さすがにクロが驚いた顔をした。






集会………って、大手買い取り人の人達の重要な会議みたいなやつ、だよね。







途中で抜けてくる………ってすごくマズイんじゃ………。








「お前らアホか。
せめて最後まで出席してこいよ」






「だってよ！
アイツまじ気に入らなかったんだよ！！
あーもう思い出しただけで腹立ってくるわー！！」







アイツ………？







どなた………？







「………やっぱ、あれって単なる噂じゃなかったんだな」








クロが頬杖をついてカラカラとアイスコーヒーを混ぜる。







氷が互いにぶつかって、コップにも攻撃を仕掛けた。









「………どうせ俺とコイツを纏めて消そうって魂胆だろ？逆恨みもいいトコだぜ」






「いや、そうでも無かったんだよね………」








コイツ、って私だよね。






ちょっと待って消すって………。







「殺され、ますか」








五人が私の方を見た。








殺されるという響きの言葉を口に出して余計に恐ろしくなった。








「私なら殺されてもいいです。
だから、クロ、クロだけは………」






「落ち着いて、Aちゃん」






「嫌。嫌です。
クロ、いなくなっちゃうの、絶対嫌です」







泣いてはいけない。









そう思っていても、じんわりと涙が浮かんできた。








それを流れないように噛み締めて、お願いです………と呟いた。







まるでこれじゃ私は悲劇のヒロインだ。







そんな扱いは嫌だけれど、クロさえ殺されなければ私は何をされてもいい。









『一円の商品は、歪んでいく』

一円三十六枚→←一円三十四枚

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す