1話ー行ってきます。 ページ2
You side
朝、うるさい目覚まし時計の音で、目を覚ます。
気だるい体を起こし、ベット際のカーテンを開ける。
眩しい光に目を細めながら目を擦る。
そうしていたら外から小鳥のさえずりが聞こえて、
あぁ。今日はいい朝だな、なんて平和ボケしたことを思う。
二度寝したい気持ちをグッと抑えてベットから降りて、
クローゼットの中に入った、見慣れない制服を手に取る。
今日は、白尾高校の入学式。
白尾高校とは、今日から私が通う高校の名である。
偏差値が高い割に、校則が緩いことが有名だ。
…まぁ、私は別に校則で選んだわけではなく、家の近さから受験しただけだけど。
2階から降りて朝ごはんを作って、食べて。
洗面所に移動して髪を結って。
ここまで余りにもいつもと変わらないものだから、
本当に今日から高校に行くんだという自覚が段々と自分の中で薄れていく。
時計を見ると、まだ朝6:30。
余裕があるからと、昨日準備した鞄の中の荷物を確認する。
…うん。多分大丈夫。
玄関に向かって靴を履く。
姿見の前で身だしなみの最終確認をして、
自分の人差し指でほっぺに触って、無理やり口角を上げる。
あぁ、やっぱ、目が笑ってないから怖いだけだな、なんて、
確認しなくたってわかったことを、再確認して気分が下がる。
…きっと、今日も笑えないまま…誰とも話さず終わるんだろうな。
(…私、一人で何やってんだろ)
我ながら虚しい行動をするなぁ、と自分に呆れつつも
『……行ってきます』
と言葉をこぼす。
誰からも“行ってらっしゃい”の声は無い。
私が“うん”と言って微笑むことも無い。
無駄に広い空間に木霊して、ただただ孤独が強調されるだけだった。
…〜*･…〜*･…〜*･…〜*･…〜*･…〜*･…〜*･…〜*･…〜*･…〜*･…〜*･…〜*･
5月14日 : 最高順位70位
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作者名：Bearl | 作成日時：2023年5月14日 10時
