chapter2-3 殺人鬼少年 ページ8
何かを訴えるような目。
この演技にもとっくに慣れてしまった。
｢……どうしたの？｣
甘ったれた心配する声。
今まで何度聞いたことか。
｢実はね、僕迷っちゃったんだ｣
辺りをきょろきょろと見回してみせる。
右へ左へと目線と首を動かし、頃合いを見計らって首を傾げた。
｢迷子？こんな時間に……？｣
明らかに動揺している。
でも、ここで追い上げるしかない。
｢僕、虐待受けてるんだ。……そんなに目立つ傷が残るようなものでも無いけど｣
後ろ手に持っていたナイフで、もう片方の腕を軽く傷つける。
皮が切れるくらいの、ほんの少しだけの厚さを。
血が滲むのを軽く拭って、女性の前に突き出す。
｢……今日は、お母さんが癇癪起こしちゃって。
避けたんだけどさ｣
傷を見た女性は、目を見開いて腕を掴む。
来た、ここだ。
｢えっ、それって警察に言った方が……っ！？｣
掴まれた腕を軸にして距離を詰める。
｢はは、それは流石に困るなぁ｣
もう片方の手で持っていたナイフが、女性に突き刺さった。
｢僕が捕まっちゃったら意味ないじゃんね？｣
まぁそう易々と捕まる気も無いけど、と呟きながら、ポケットの中を漁る。
……数秒後。
ポケットの中からは、1枚のカードが踊り出た。
腰を抜かしたまま後ずさっていく女性にカードとナイフを突きつけて言う。
｢僕、最期まで夢と役は崩さない主義なんだ。｣
ナイフが皮膚の上を滑っていく。
薔薇のようにも見える傷跡を残し、鮮血が舞った。
傷跡にカードを突き刺し、貼り付けた笑みを崩さないまま口だけが動く。
｢それでは、今宵はこれで終幕！｣
何処からともなく聞こえる鳥の羽音を拍手として聴きながら、その場でお辞儀をしてみせる。
次に開いたその目は、"虐待を受けて逃げ出したか弱い少年"ではなく、確実に"海刻アオイ"のものだった。
羽音が止んだ頃、1羽の
自然とそちらを向いた目は、1羽の烏を捕らえていた。
｢まだお客様がいたの？｣
役に戻ることもせず、声色だけを上げて言う。
｢本日はご来場、有難う御座いました。｣
｢またのお越しをお待ちしております。……なんてね｣
足元に落ちていた鋭い石を、烏に目掛け投げつける。
周りの烏達は止まっている中、その1羽の烏だけが宵闇の空に飛び立った。
出血には至らないものの、数枚の羽が辺りに散らばる。
｢閉幕後なんだから……多少融通の効かないお客様には強制退場してもらわなくちゃね｣
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無神氷狐龍(プロフ) - 黄桃さん» ありがとうございます！いえいえ…！黄桃さんのじゅじゅエッグの続き、凄く気になります(*´ω`*)黄桃さんも頑張ってくださいね！ (2021年1月15日 16時) (
レス) id: 8c5ca7a3be (このIDを非表示/違反報告)
黄桃(プロフ) - こういう物語好きです！神作作る作者さんは神か！？私の小説と比べると・・・・（。；_；。）応援してます (2021年1月15日 1時) (レス) id: 2f74b3d2f0 (このIDを非表示/違反報告)
無神氷狐龍(プロフ) - megumiさん» こちらこそコメント&読んでいただいてありがとうございます…！これからも少しづつ時間の許す限り更新していこうと思います。よろしくお願いします( *°ω°* ) (2021年1月9日 21時) (レス) id: 8c5ca7a3be (このIDを非表示/違反報告)
無神氷狐龍(プロフ) - テノヒラさん» なんと…！私自身も好きな子なのでそう言っていただけて嬉しいです！ありがとうございます(´ω`) (2021年1月9日 21時) (レス) id: 8c5ca7a3be (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - 更新ありがとうございます！ いつもハラハラドキドキしながら、「次はどうなるのだろう？」と、拝読させて頂いてます。これからも、応援しています！ (2021年1月9日 20時) (レス) id: 1a15500b7d (このIDを非表示/違反報告)
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