*変人柱は学ばない 壱 ページ33
体が冷たい。力が入らない。うまく頭が働かない。
真っ暗なのに、陽のようなあたたかさとちょっぴり焦げ臭いにおいがする。
朦朧とする意識のなかで、私は声を聞いていた。
「Aさん…Aさんッ!!しっかりしてください、もうすぐ蝶屋敷です!!」
その声で、手放しかけていた意識と記憶をなんとか取り戻す。
私は確か、炭治郎くんと任務に出かけて、それで鬼と戦ってて。
それから鬼が血鬼術を使ってきたから、咄嗟に私が前に出て_
あれ、なんで前に出たんだっけ。
ぱっと思い浮かんだ記憶が、沈むように霞んできえていく。
結局把握できるのは、私は重傷を負って炭治郎くんにおぶられているという事実だけだった。
「は、はは…!たん、じろぉくん、も、だめかもしれない……」
「ッなに、言ってるんですか!!絶対に死なせたりしませんから!!」
そんなこと、言われたって。
目の前はちかちかするし、熱はだんだんと遠のいていく。
こんなんじゃ柱失格だってわかってるよ、わかってるのに。
…どうして、体が言うことをきいてくれないの。
ああ、こんなんじゃしのぶさんにこっぴどく叱られちゃうよ。
善逸くんは言わずもがな号泣だろうし、冨岡さんと伊之助くんあたりは…どうだろう。
不死川さんや煉獄さんたちにもまた心配かけちゃうだろうし。
ほんと、迷惑かけてばっかりだ。
私が役に立てたことなんて果たしてあったのだろうか。
瞼が重くって、どんどん眠たくなっていく。
布団に飛び込んだときの心地いい眠さじゃなくて、二度と醒めないであろう重たい眠さ。
くそ、くそ!折角私を必要としてくれるひとたちと出会えたのに!!
記憶がない私を、そのままの私を、がらんどうだった私を!
_生きていいって背中を押してくれたひとが、確かにいるって実感できたのに!!
ぐらぐらと揺さぶるような感情が私のなかを暴れ狂った。
けど吐き出せるような場所はどこにだってないから、やっぱり呑み込むしかないのだ。
次第に温もりも、視界も、音も奪われていく。
これじゃあまるで、暗闇のなかにひとりぼっち。
血鬼術のせいなのかはわからないけど、そんな気がしてならない。
けれど、この意識だけは決して離すまいと、必死にしがみついている。
ここで諦めたら本当の本当に終わりだ、せめてもう少しだけ延命しなきゃ。
あとちょっと、ほんのすこしで。
最後、微かに聞いたのは襖の音。
もう大丈夫_そう直感が告げて、そのまま意識を手放した。
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ころころ - ゆるふわですやん! 知ってるんですか! (2019年10月4日 20時) (レス) id: 327fdb2cac (このIDを非表示/違反報告)
ネロ - こんのなんでも屋さん» コメントありがとうございます〜ッッ!!!わりと皆さんに気付いてもらえて内心同志を見つけられたようで嬉しいです!! (2019年10月3日 17時) (レス) id: 647675a819 (このIDを非表示/違反報告)
こんのなんでも屋 - あーっあーっしぬかとおもった!しぬかとおもった!ってどっかで聞いた事あると思ったらぴーまるちゃんとこのうさぎさんw (2019年10月2日 19時) (レス) id: 8cb1996207 (このIDを非表示/違反報告)
ネロ - ゆきさん» わーコメントありがとうございます!!!続きます!!続編行きます!!体調管理にも気を配りつつ頑張っていきますー!! (2019年10月2日 7時) (レス) id: 647675a819 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 一瞬最終回かと思ってめっちゃびっくりしたけど、続くの文字を見てとりあえず一安心。この作品は今まで見てきた中で一番好きです。これからも投稿楽しみに待ってます。無理をせず頑張ってください。 (2019年10月1日 21時) (レス) id: fbbd62be54 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ネロ | 作成日時:2019年9月8日 15時