第四章：孤独の葛藤/口喧嘩 ページ50
A「な、なぜ…？」
富島「女の勘よ」
高千穂「確かに、阿鳥さんの前では
柔らかくなるよな。笑ってたし。
俺相手の時とはまるで違う」
A「それは高千穂様に問題があるだけでは」
高千穂「そういう所だよ」
富島「ふふ、まぁ…独身女の言う事なんて
アテにならないでしょうけどね」
A「そんなことは…」
富島様の自虐がキツ過ぎてコメントに困ります。
富島「『毒林檎』の少女とは違って、
貴方はお姫様にもなれると思うのよ」
A「…？」
富島「地獄の苦しみを味わう事があろうと…
運命の王子様がきっと、助けに来てくれる」
A「それが…阿鳥くんだと？」
富島「あくまで、勘だけどね」
高千穂「……」
富島「ご馳走様。美味しかったわ」
A「ありがとう御座います。
うちの自慢の料理人にも伝えておきますね」
富島「そうして頂戴」
食事を終えた富島様が立ち上がる。
富島「さて、と！」
お腹いっぱいになって満足した様子の富島様は
フロントに向かった。
チェックアウトするようだ。
私もお見送りに向かう。
富島「貴方の歌、本当によかったわ。
出来ることなら忘れたくないけれど…
でも、きっと大丈夫ね。
潜在的な記憶として残ると信じているわ」
A「…忘れても構いませんよ？」
富島「まだ恥ずかしがってるの？もう…
私は本当に楽しかったのよ！
今の世代の子にも伝わるものがある…
それが知れただけで、凄く勇気が湧いてきた。
貴方というファンと出会えたおかげで、
前に進む希望を貰えたの！
ありがとう」
A「私の方こそ。…ライブのおかげで、
いい事が沢山ありましたから」
富島「ふふ、彼にもよろしくね」
A「…はい///」
最後の最後にそれだけ告げて、
富島様はチェックアウトした。
阿鳥「あ。Aちゃん」
A「うっわぁ！？」
阿鳥「え！？ごめん、驚かせた！？」
A「とても驚いた！！」
阿鳥「ごめん！！？」
富島様がチェックアウトした直後にフロントに
現れるとは…。タイミングが鬼。
阿鳥「顔…赤いけど、大丈夫？」
A「大丈夫デス」
阿鳥「熱とか…体調が悪いなら休んで…」
A「大丈夫だってば！」
阿鳥「無理は危険だって、
ちょっと前に経験したばかりでしょ！」
A「違うから怒らないで！」
阿鳥「怒ってない！」
A「怒ってた！」
…後に我にかえって反省する。
めちゃくちゃ子供みたいな口喧嘩だった。
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作者名：麦兎 | 作成日時：2019年6月25日 0時
