第四章：孤独の葛藤/運命の王子様 ページ49
翌朝。
朝食を終えた私は、
食堂で接客をしている。
阿鳥「ここの寝癖直ってない」
A「えっ」
午前中フリーの阿鳥くんが食堂当番の手伝い。
朝は朝食を食べに来るお客様で
そこそこ忙しい。
阿鳥「…起きた時から
ずっとピョンピョンしてる」
阿鳥くんが私の頭に手を置いて
ハネている部分を抑えるが、
離すとすぐにまたハネる。
A「あはは…濡らして乾かせばいいと
思ってたけど…やっぱ鏡は確認しなきゃだね」
阿鳥「雑過ぎ。女の子なんだから
身嗜みに気を付けなさい…って、
瑪瑙さんからも忠告されてたよ」
A「瑪瑙さんからも言われてんのか」
阿鳥「なんにせよ、接客は接客だからね？
緩いホテルだからって気を抜かない」
A「はーい」
阿鳥「此処も少し落ち着いてきたし、
今のうちに直しておいで」
A「急いで行ってくる」
部屋に戻って鏡を確認する。
…一箇所だけ見事にハネていた。
集中的に濡らして乾かしたら、解決。
改めて食堂の仕事を再開。
富島「昨日はお疲れ様」
A「ありがとう御座います。
…とても楽しいライブでした」
食堂に戻ると、富島様が朝食を食べていた。
富島「それは良かったわ。
貴方、歌手向いてるかもよ？」
A「嬉しいです。
…けど、私には他の夢がありますので」
富島「そのカメラ？」
A「はい！」
今日から、私の制服に装備が一つ増えた。
愛用しているカメラを首から下げているのだ。
A「一枚、撮っても？」
富島「綺麗にお願いね(ﾆｺｯ」
ｶｼｬ
カメラに笑顔を向けてくれた。
A「富島様はどう撮ってもお綺麗ですよ」
富島「あら、嬉しい」
嘘じゃない。50代だと知ってからも
信じられないくらい美人だもの。
A「今日は焼き鮭ですか」
富島「そう！うちの定食屋でも二番目に自慢
なのが焼き鮭定食よ。ここの料理人さんは
何でも作ってくれるから…
食べ慣れた味を求めてしまうのよね」
高千穂「あの子無しじゃあ
食堂が成り立たないだろうな」
富島「ふふ、言えてるわ」
隣で同じメニューを食べている高千穂様。
なんでちょっと仲良くなってんだよ。
富島「ところで…」
A「？」
阿鳥くんが他の仕事をしに食堂を出た頃合いを
見計らって、富島様が口を開いた。
富島「彼は、運命の王子様かしら？」
A「………」
一瞬の思考停止の後、
A「はい！？///」
全身が熱くなった。
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作者名：麦兎 | 作成日時：2019年6月25日 0時
