第四章:孤独の葛藤/楽譜と歌詞 ページ31
A「残りの箱は鍵ですね。
クローゼットの下の引き出し、
開くかもしれません」
林檎「ええ、試してみましょう」
鍵を使って引き出しを開ける。
A「これは…?」
出てきたのは何冊ものノートと、楽譜の数々。
林檎「…!」
A「中を確認しても?」
林檎「ええ、良いわよ」
ノートの内容は、歌詞…だろうか?
しかし私の知っている曲の歌詞ではない。
歌詞が完成しているらしいページの他にも
単語やフレーズなどが乱雑に書かれている様な
ページがある。
メモ書きなのだろう。
楽譜には、ノートと同じ歌詞が乗っていたり
更にそこから直しを入れていたり…
試行錯誤を繰り返して
曲を作っているのが伝わる。
林檎「それは…私が書いたものだわ」
A「!」
ここにあるのは知らない曲ばかりだが、
言葉の選び方や曲の雰囲気はことみんの曲に
よく似ている。
A「お客様は、ことみんの曲を
書いていたのでしょうか?…作曲家とか?」
林檎「そこまでは…わからないわ」
A「そうですか…」
他にも探してみるが、
めぼしいモノは見つからなかった。
A「時間が経てば、部屋が変化する可能性
が御座います。そうすれば、また何か
思い出されるかと…」
林檎「そうね。
今はゆっくり考えながら休もうかしら」
私はその間、他の仕事を片付ける事にした。
A「フフーン♪フンー♪」
ルリ「…さっきから、随分ご機嫌じゃない?」
A「そう?」
高千穂様の部屋の掃除をしてから
ルリちゃんの手伝いで食器洗いをしている。
ルリ「顔はいつも通りだけどね。
アンタも鼻歌なんて歌うんだ」
A「好きな曲を思い出してたんだ」
脳裏に浮かぶと歌いたくなってしまう。
ことみんのデビュー曲『毒林檎』。
A「はぁ…あんな艷やかな歌声…
真似しようにも出来ないよ…」
ことみんを想い溜息が出る。
思い浮かべるだけでウットリする歌声なんだ。
ルリ「これ、4番テーブルにお願い」
A「はーい」
ルリちゃんが作った生姜焼き定食を運ぶ。
A「フンフーン♪」
高千穂「…鼻歌交じりに接客すんなよ」
A「今、お客様は高千穂様だけです。
これくらい構わないでしょう?」
高千穂「ほんっとテキトーな従業員だな」
悪態をつきながら高千穂様は
生姜焼き定食を食べ始める。
高千穂「で、誰の曲なんだ?」
A「ことみんです」
高千穂「知らねぇ」
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作者名:麦兎 | 作成日時:2019年6月25日 0時