第一章：茜色/通過地点 ページ1
ここは何処なのだろう。
真っ赤な夕焼け空と
永遠に広がっている地平線。
それしか、無い。
綺麗な茜色の景色…。
カメラがあれば撮影したかった。
しかし今の私は何も持っていない。
服装はレトロなロング丈のワン ピースだ。
スカートなんて久しく履いてない気がするけど…
なんでこんな服を着ているんだか。
まぁ、色は黒だしデザインは嫌いじゃない。
それにしても……何もわからない。
頭の中がハッキリしない。
気が付いた時には
知らない場所に見覚えのない服で
一人、ただ立っていた。
私「困ったな…」
どうすればいい？
何を考えても何もわからない。
ただ、なんとなく歩く事しかできなかった。
しばらく歩いていると、
ポツンと佇む看板が目に付いた。
私「黄昏ホテル…？」
ホテルがあるのか？
……行き宛もないし、泊まれるなら泊まりたい。
お金ないけど大丈夫かな。
とにかく今は
何か現状打破する為のキッカケが欲しい。
それだけ考えてホテルを探すと
突然現れた。
ホテルが。
私「……」
ファンタジーな登場をしたホテルに
戸惑わないと言えば嘘になる。
…が、
私「これ以外に何も無いしな…」
選択肢は一つのみだった。
支配人「ようこそ、黄昏ホテルへ」
私「やべーな」
ホテルに入ると
頭が燃えている男性？が現れた。
率直な感想が口から漏れる。
支配人「此処はあの世とこの世の狭間に
存在するホテルでございます。私は当ホテルの
支配人。…そしてお客様は、
ご自身が生きているかも死んでいるかも
定かではない魂でいらっしゃいます」
私「……」
ツッコミが追いつかない。
むしろ諦めて黙って聞いた。
私「外には何もない。他に行く場所もない。
此処は、そういう人達が来る場所なんだね？」
支配人「仰る通りにござます。それでは、
こちらの宿泊名簿にサインをお願い致します」
私「お金や宿泊期限は？」
支配人「御座いません」
私「ふーん…」
よくわかんないけど、わかった。
今私は、迷える魂なわけだ。
生きてるかもしれないし
死んでるかもしれない。
此処は行くべき場所へ行く為の
通過地点のような場所なのだろう。
そう考えながら名簿に名前を記入した。
支配人「おお！
お名前を憶えていらっしゃるのですね！」
A「？」
自分の名前くらい、当然だろうと思ったが
言われてみれば書く瞬間まで忘れていたような
気もする。
これが私の名前だ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 10人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：麦兎 | 作成日時：2019年6月25日 0時
