スクラブ男子

009 み、る、な ページ9

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当直明けで眠そうにあくびをする彼と、顔を合わせる朝。グーにした手を口の前に持ってって、だるそうに何回も何回もおっきな口を開く。右手でスマホをスクロールしながら。









｢……おはようございます、｣





名取｢ん、｣









もちろん目なんて合うわけないけど、お疲れさまを込めた｢おはよう｣だけでも。もうそろそろ勤務も終わるだろうし、気が抜けてる頃かなーって。









慧｢ねぇ、ねぇねぇ。｣








肩をとんとん叩いてくるのは伊野尾くん。患者さんに持っていくお薬を準備してたけど、ひっきりなしに声をかけてくるから、なぁに？って呆れながら振り返った。









慧｢今日の歓迎会いく？｣





｢…うん、｣





慧｢え、まじ？めずらしくない？｣









あからさまにテンションが上がってる。｢俺Aのとなり座るー｣ってルンルンでどこかに行ってしまった後ろ姿。見つめるその先には、ヒンヤリと突き刺さる視線。





スマホから上げた目と、ぴたりと交わって睨まれる。わかってるよな？ってそう言いたげな瞳。またすぐに画面に戻された視線。眠いのか、すごく不機嫌そう。





しばらくして、緋山先生に｢名取！｣って呼ばれてぎょろって目を見開いて。書類を渡されて何か注意されてる。目を擦りながら聞いてるその態度に先生がイライラしてること、気づいてる？

すいません、って反省の色も見せずにそっけない返事をした彼は、だるそうにチェアに腰かけて、胸元から取り出したボールペンをカチカチ。






めんどくさそうな顔でまたあくびをしながら、書類に何か書き始める。と、こちらをチラリと見て。







“み、る、な”

って口パクで伝えてくる彼。そんなに見てた？目で追っちゃってたかな…、あーもうだからイヤなのに。





片思いをするには絶好の距離だけど、ボディーパートナーとして傍にいるには近すぎる。こちらにしか｢好き｣がないのに、繋ぎとめてばかりいる彼はずるい。高校生の時から何も変わらない。頭が良くて、生意気なのに女の子からはモテモテで。そのくせ彼女はつくらないし。





どうせその頃から、特定なんて決めずにとっかえひっかえしてたんでしょ。今だって、“わたしだけ”なんて所詮、口だけかもしれないのに。









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