008 綱渡りのような ページ8
.
名取「……何、足んねえ?」
「ちがう…、」
わたしに手を掴まれたまま、ベッドから立ち上がってスニーカーを履いて。まだ寝転がったままのわたしの横にしゃがんで、目線を合わせてくれる。
「…ちゅー、して」
名取「そんなことかよ、」
口元で微笑みながら、普段は絶対見せないだろうなって甘い目でわたしを見下ろす彼。もういつもの格好なのに、まだ“名取先生”に戻っていないのが不思議。
愛おしそうに見つめられた後、唇が降りてきて、重なりそうな瞬間だった。
彼の胸元から響いた、聞き慣れた音。
迷いなく取り出したPHSから、藍沢先生の低い声がした。
藍沢「名取どこにいる。ICUの患者が急変した。今すぐ戻ってくれ。」
ずっと、目が合ったままそれを聞いてた。藍沢先生の緊迫した声が途絶えた後、
名取「わかりました。すぐ戻ります。」
甘い声も、優しい顔もすぐに終わりを告げて。
「ごめんな?」って短くつぶやいた彼が、ぽんぽんって頭を撫でて足早に去っていく。小さくなっていく大好きな背中。
“Emergency Medical Service”
「救命」というだけあって、患者さんの命より大切なものなどないのだと思う。やる気がない、生意気だ、と言われていても所詮はドクターで。いずれは立派なフライトドクターになって空を飛び回るだろうから。
いつまで必要とされるのか、いつまでこの関係が続くのか、まるで綱渡りのような毎日なの。
.
3179人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「Hey!Say!JUMP」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ミツキ(プロフ) - 山田先生の「いろいろする子」とのお話が読みたいです。お願いできますか? (2021年6月5日 22時) (レス) id: cef3d2c4a8 (このIDを非表示/違反報告)
紬(プロフ) - 500億回くらい読んでます!!めちゃ好きです!! (2019年6月24日 22時) (レス) id: 29a6e26902 (このIDを非表示/違反報告)
るい(プロフ) - 通知欄見て一番に飛んできてます(T-T)!スクラブ男子2心待ちにしてます!更新頑張ってください! (2017年10月27日 22時) (レス) id: a78f0f5291 (このIDを非表示/違反報告)
もち岡 - もどかしさと切なさが止まりません!続きが気になりすぎて暇さえあればすぐ読み返しちゃってます(>ν<)笑 大変だとは思いますがこれからも更新頑張ってください! (2017年10月25日 17時) (レス) id: c4579ee802 (このIDを非表示/違反報告)
さくふら(プロフ) - 初めてコメントさせて頂きます!主人公ちゃんの気持ちが痛いほど伝わってきて私も涙が止まりません!!( ; ; )むぎさんの作品、本当に面白くて大好きです!応援してます!頑張って下さい!! (2017年10月25日 1時) (レス) id: 7a1ffcf927 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:むぎ | 作成日時:2017年9月17日 10時