スクラブ男子

030 これでよかったの？ ページ30

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名取｢…っ、｣









その瞬間も、ずっと唇は塞がれたまま。

叫びたくても、こんなやり方はイヤだと突き放したくても、何もさせてくれない彼。泣きたいのはこっちなのに、苦しいのはこっちなのに、彼も泣きそうな目をしてる。







つらいのも、現実を見たくないのも、ちゃんとわかってるよ。ミスをした自分に腹が立つのも、仕方のないことだけど、これは違う………







わたしが好きな彼じゃない。こんな愛のない行為、今まで一度たりともしなかったのに。









名取｢…っ、｣







彼越しに見つめた天井がぼやけていく。溢れる涙で、大好きなはずの彼も見えなくなる。








名取｢………っん、｣









揺れる視界。

いつもよりずっとずっと激しい彼の動きに、ストレッチャーが何度も軋む。





誰かに見つかったらどうしようとか、そんなことはもう考えなくなった。ただ自分の欲をぶつけてくるだけの彼が、もう彼じゃないみたいに見える。









名取｢……っ、｣









片目をつぶって、気持ちよさそうな顔をして。熱い吐息といっしょに力尽きた彼が、わたしの上にゆっくりと倒れ込んできた。









これでよかったの？

満足したの？









どこにもぶつけようのない苛立ちを、わたしの体で忘れることはできた？









わたしに覆いかぶさったまま、耳元で息を荒らげる彼が、涙を流すわたしに気づく。









………遅い、

今さらそんな顔したって。









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