スクラブ男子

024 きっかけ ページ24

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一歩外に出ればドクターの顔。

スクラブを身にまとった彼は誰よりもかっこいい。さっきまで一緒にいた、後ろから抱きついて甘えるような声を出してた彼とは大違いで。きっとここにいる誰に言っても信じてもらえない。









名取｢あー、はい。わかりました。｣









言われたことをひとつひとつ、だるそうにこなしていく彼。ちょっと猫背で、やる気のなさが全面に……





その時だった。









白石｢翔北救命センターです。｣









鳴り響いたコール音に、そこにいる全員が集中する。白石先生がとった受話器の先で、起こっている何かに耳をすませて。





ふと彼に目をやると、それでもパソコンの前の椅子に座って余裕そうにしてる。背もたれに体を預けて、ため息をひとつ、……ふたつ。









｢桜消防よりドクターヘリ要請です。団地内私道にて、下水道工事中の作業員３名が増水により流され、救助にあたっていたレスキュー隊員１名が負傷、作業員２名は救助され軽症です。１名は行方がわかりません。｣






白石｢わかりました。すぐに向かいます。｣









白石先生と雪村さんが颯爽と出ていった後、だるそうにカバンを手にして向かう彼の姿が見えた。




医学部でも成績は常にトップクラスで、腕もいいと評判の生徒だったらしい。昔から器用だったし、名の知れた名取総合病院の息子というだけあってプレッシャーもあったはず。今ないのは、ドクターとしての情熱くらい？彼に何かきっかけがあるとしたら、それはドクターに誇りを持つきっかけか、きっぱりと辞めるきっかけか、どちらかだろうな………









バタバタと受け入れの準備をしている間に、窓の外には患者を乗せたドクターヘリが小さく見えてきた。次第に音も大きくなって、緊迫した雰囲気に包まれる。









でも、帰ってきたのは白石先生と雪村さんだけ。どうやら彼は軽傷の患者さんを担当したみたいで、後から戻ってくるらしい。









…………そう、この時は思いもしなかったんだ。

これが、大きなミスの始まりだったこと。わたしたちの関係が崩れ始める、｢きっかけ｣になることも。









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