スクラブ男子

011 スネ ページ11

.








山田｢お前、いい加減にしろって。えろい目でAちゃん見てんじゃねーよ、｣









宴会も進んで、それぞれのグループが固定になってくる頃。このテーブルにはフェローの山田先生が加わって、いつもの同い年４人で落ち着いた。









慧｢いーじゃん、えろい目で見たって。ねぇ？｣









このノリでちゅーしちゃう？って。

にゅ、と唇を突き出して近づいてくる伊野尾くん。ぷっくりしたほっぺをほんのりピンク色に染めて。とろんってした目とその笑い方。………完全に酔っぱらってる、









慧｢ちゅー、｣





すっごく幸せそうな顔で。





山田｢おっまえ、バカか！｣









冗談かと思ってたけど、じわじわと近づいてきた唇は止まる気配がなくて。え？え？って今さら焦って、でももう逃げてる暇もなくて。やばい、と思ってぎゅっと目をつぶると、




数秒後にガタン、って机が少しだけ跳ね上がるような音がした。どうやら伊野尾くんが膝をぶつけたらしい。









慧｢ってぇー…、んな本気でやんなくてもいーじゃんばかぁ、｣





顔を歪めてつぶやく伊野尾くん。ほっと安心してるわたしを、睨んでる視線には気づかなかったけど。





山田｢いやそんな叩いてないって、(笑)｣





ふわっと笑いながら、山田先生が塩辛をひとくち。





慧｢ちがう、名取せんせが蹴ったのー。まじ今のは本気の蹴りだよ。飛び上がったら膝もぶつけるしさーもう、｣









最悪だぁ…、って。

睨みきれていない伊野尾くんを横目に。犯人は目の前で顔色ひとつ変えずに何杯目かのビールを流し込んでいる。上下に大きく動く喉仏に目が奪われていることも、ドキドキしてることも、まるで全部知っているかのようにチラリと視線を送ってくる。




蹴られた左足をイスに上げて胸の前で抱きかかえてる伊野尾くん。相当痛かったのか、スネのあたりに息を吹きかけてはスリスリと撫でている。









そんなに蹴ったの？

かわいそう、スネ痛いのに。









.

012 アイコンタクト→←010 付箋

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す