014 夢見た世界 ページ14
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8月25日。
人間の世界、1日目の朝。
リョースケ「お嬢様!」
何となく海が恋しくなって砂浜を歩いていると、遠くで聞き慣れた声が。
「リョースケ?こんなところで何してるの?」
リョースケ「心配しましたよ、突然いなくなってしまったので……」
声のほうを振り返ると、どこからか走ってきた様子のリョースケが息を切らしていた。
「ごめんごめん。思ったより早く準備できたから、ユウリを呼んで魔法をかけてもらったの。おかげでほら。足もあるのよ。人間みたいでしょう?」
にこにこしながら話すわたしを、どこか切なく見つめるリョースケが不思議で。何を思ってそんな顔してるのか、わたしにはわからなかった。だけど、
リョースケ「魔法って、」
「足をもらう代わりに、彼に触れたら消えてしまう魔法よ。あなたも知ってるでしょう?」
リョースケ「本当に、よろしいのですか。」
「だって彼に触らなければいいだけなのよ?それで1週間あの人といられるんだもの。こんな贅沢はないわ。」
リョースケ「ですが……」
それでもリョースケは心配そうだった。
リョースケのおかげで人間の世界に来られたのに。今幸せで仕方ないのに。彼だけは浮かない顔をする。
「何がそんなに心配なの?」
堪らず問いかけたわたしに、少し言いづらそうにしながらも、リョースケは言った。
リョースケ「お嬢様は、まだわかっておられません。好きな人に触れられないことが、どんなに苦しいことか。」
「………、」
リョースケ「おわかりだとは思いますが、何があってもその方に触れてはなりませんよ。お嬢様。」
「まさか。消えてしまうとわかっていながら、わたしが触れると思ってるの?」
リョースケ「………それは、」
「大丈夫よ、必ず海へ帰るから。」
わたしが笑ってみせると、リョースケはようやく苦し紛れの笑顔を見せた。
リョースケ「では、わたしも時々こちらに来ますから、何かあればおっしゃってくださいね。」
「ありがとう。」
それだけ言うと、リョースケはどこかへ行ってしまった。
こんなにも想ってくれる執事がいて、わたしは幸せ者。海の中に不自由なんて何ひとつなかったのに。夢見た人間の世界は、海の中とはまるで違う。それは景色の問題か、空気か、身なりか。……それとも。
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むぎ(プロフ) - まくるさん» ありがとうございます!大変なご時世だからこそ、少しでもみなさまの息抜きになればと思っています(^ ^) この新作もキュンキュンしていただけるように頑張ります。これから色んな展開が出てきますので、最後までよろしくお願いします☆ (2020年7月4日 19時) (レス) id: 88d801cec9 (このIDを非表示/違反報告)
まくる(プロフ) - 初コメント失礼します。新しい作品ですね、おめでとうございます!いつもキュンキュンしながらむぎさんの作品を拝見させて頂いております。こんなご時世で大変かもしれませんが、自分のペースでいいので更新頑張って下さいね♪ (2020年6月28日 18時) (レス) id: 968d5c61de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むぎ | 作成日時:2020年6月28日 15時