011 可愛いから ページ11
.
ちょっと来て、と連れ出したのは夜の海。
不思議そうにしながらも一緒に来てくれた彼と、並んで腰を下ろした。
｢………ごめんね、さっき。｣
大貴｢ん？｣
｢大袈裟に反応しちゃって、｣
ユラユラと揺れる水面を眺めながら呟いた。
波の音に消えてしまいそうな小さな声も、彼はちゃんと拾い上げてくれる。気にしてないよ、って。きっとこっちを見て微笑んでくれたのに、わたしは彼のほうを見られなかった。
｢………理由があって、｣
大貴｢理由？｣
｢あなたに触ったり、触られたり、できない理由。｣
言わなきゃ言わなきゃと思うのに、喉につっかえて出てこない言葉。
わたしは人魚。あなたに触れたら消えてしまう。１週間後には海に帰らなくちゃならない。そして何より、………人間とは結ばれない。
もしかしたら好きな人が、彼女が、いるかもしれないのに。何を期待してるのって笑われるかもしれないけど。それでも。
｢………あのね、｣
大貴｢いいよ、言わなくて。｣
｢……え？｣
どうにか決心をして口を開きかけたわたしを、遮ったのは彼だった。
優しい口調。温かい声のトーン。わたしを落ち着かせるように、彼は続けた。
大貴｢理由なんていいから。ほかにも言いたいことあったら言って？たった１週間だけど、一緒に暮らすんだからさ。｣
我慢するの大変でしょ、って。
彼は笑ってくれた。
触れたら消えるなんて、口にしたらきっと怖がらせてしまう。だから言いづらかった。でも彼はこんな短い時間で、わたしの素振りで、それもわかってくれる。自然に気遣ってくれる。
大貴｢俺も気をつけないと、やべーな。｣
そう言いながら視線を海に戻して、ぐーっと伸びをした彼に、今度はわたしが問いかける。
｢何が？｣
大貴｢いや、無意識に触れちゃいそうだなぁって。………すげー可愛いからさ。｣
｢っ、｣
なんて、チラリと一瞬こっちを見ては、すぐに逸らして恥ずかしそうに笑っている。
確かにわたしに向けられていた視線に、言葉に、また鼓動が速くなった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 527人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「Hey!Say!JUMP」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
むぎ(プロフ) - まくるさん» ありがとうございます！大変なご時世だからこそ、少しでもみなさまの息抜きになればと思っています(^ ^) この新作もキュンキュンしていただけるように頑張ります。これから色んな展開が出てきますので、最後までよろしくお願いします☆ (2020年7月4日 19時) (
レス) id: 88d801cec9 (このIDを非表示/違反報告)
まくる(プロフ) - 初コメント失礼します。新しい作品ですね、おめでとうございます！いつもキュンキュンしながらむぎさんの作品を拝見させて頂いております。こんなご時世で大変かもしれませんが、自分のペースでいいので更新頑張って下さいね♪ (2020年6月28日 18時) (レス) id: 968d5c61de (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：むぎ
| 作成日時：2020年6月28日 15時
