087 本気で恋をしたの ページ38
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月日は流れ、あっという間に冬が来た。
冬休みが終わり、テストが終わり、受験が終わり…………残すは卒業式だけ。3学期はほとんどお休みで学校に行く機会もないから、必然的にあの人とも会わなくなった。
この数ヶ月、涼介くんと色んなところに出かけた。
映画も、ランチも、ちょっと足を伸ばした遠出も。涼介くんとならどこへ行っても楽しかった。わたしのことを大切に思ってくれる彼となら、きっと幸せになれると思った。
卒業式の1週間前。式の練習という名目で、わたしたち3年生は学校に呼び出された。一通りの練習を終えて解散となり廊下を歩いていると、柔らかい声がわたしを呼び止める。
白石「……少しだけ、話を聞いてくれないかな。」
保健室の前で目撃してから、一度も話していなかった彼女。バツが悪そうに俯いている。
もう卒業するんだし、ちゃんと知っておいたほうが後悔もないかなって。軽い気持ちで頷いた。あの時もわたしの好きな人を宣言したわけではなかったし、裏切られた、なんて言う資格もなかったのに。勝手に距離を置いていた。わたしは何も知らなかったんだ。
白石「…………ずっと謝りたくて。あの日、きっと誤解させちゃったよね。」
「……誤解?」
あの頃よく相談に乗ってもらった進路指導室。
西日が差し込むこの部屋で、わたしは首を傾げた。
白石「わたしと有岡先生、あなたが思ってるような関係じゃないの。」
「…………、」
白石「昔、わたし告白したのね?彼に。」
「…!」
白石「……って言っても、好きなのはわたしだけで。もちろんフラれたんだけど。」
「…………」
白石「でもね、わたし諦めきれなくて。縋るような思いで彼に泣きついたの。それで、可哀想に思ったのか、都合よく使われたのかわかんないけど、そこから体だけの関係になった。」
「………、」
白石「でもあの人、わたし以外にもそういう関係の人がたくさんいて。それもわかってて、わたしは彼と会ってたんだけど。………ある時からね、抱いてくれなくなった。」
「…………」
白石「わたしだけじゃなくて、他の女の人とも関係を切ったの。いらなくなったのよ。そういうことのためだけの女なんて。どうしてだと思う?」
「…………」
白石「あなたに、本気で恋をしたの。」
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じゅんぴー(プロフ) - 完結、おめでとうございます。むぎ様のお話は大好きで、いつも楽しみにしています。これからも、むぎ様のペースで頑張られてください!応援してます!! (2020年6月22日 6時) (レス) id: d0505f201e (このIDを非表示/違反報告)
のん - 完結おめでとうございます!このお話大好きで、毎回の更新とても楽しみにしてました!読者を待たせることのないペースで更新してくださってありがとうございました! (2020年6月21日 21時) (レス) id: 36842179d0 (このIDを非表示/違反報告)
有岡担 - 完結おめでとうございます!前作から読ませていただきました。本当にこのお話が大好きなので終わってしまうのはとても寂しい気持ちでいっぱいですが、番外編的なお話を読んで見たいなと思いました。本当に完結おめでとうございます。 (2020年6月21日 17時) (レス) id: a06e75bb6c (このIDを非表示/違反報告)
さっき(プロフ) - 完結おめでとうございます!!最後まできゅんきゅんしっぱなしのお話でした…!!これからも頑張ってくださいね!応援してます(*´-`) (2020年6月21日 15時) (レス) id: 081a71a0e7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆいか - 完結おめでとうございます!いつも楽しく拝見させていただいていました♪作者さんの作品が大好きです!新作も楽しみにしていますね♪これからもずっと応援しています!今までお疲れ様でした!これからも頑張ってください♪ (2020年6月21日 14時) (レス) id: 86d46ef939 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むぎ | 作成日時:2020年4月19日 15時