073 連れ去って ページ24
.
有岡｢Aー、？｣
隣から聞こえる優しい声に、ふと耳が反応しても今は小さく唸ることしかできなくて。大事に助手席に下ろしてくれて、毛布もかけてくれて、動き出した車の中で少しの間ウトウトしてた。次に目が覚めたのは、先生がわたしの名前を呼んだ時。
きょろきょろって目だけ動かして窓の外を見たとき、すっごい見慣れた景色な気がしたの。………なのにね、
有岡｢もうちょっと寝てていーよ。｣
｢…ん、｣
ちょっとコンビニだけ寄るわ、って。
その言葉を最後にわたしはまた意識を手放した。
先生がいつも聴いてる洋楽も、今日は音がちっちゃくて、ふって目線をズラして盗み見た横顔はやっぱりかっこよくて………どうか夢の中にも、ってこんなぼーっとした頭でも願うくらい。
有岡｢ほら、歩けねーんだろ。｣
｢…んん、｣
有岡｢寝ててもいーから。もーちょいこっち来い、｣
とんとんってお腹のあたりに手が触れて、まぶたの隙間にぼやける先生の顔。頼ってばっかり嫌なのに………
抱っこばっかり、先生に嫌われそうだって怖くなりながらまた手を伸ばす。その腕を首に回してくれて、ずりずりって吸い寄せられるように先生に抱えられた。
器用に腰でドアを閉めて、ぴぴって車がロックされる音。冬じゃないのに、ブルブルと震えるほどの寒気がした。
有岡｢…あんさ、あんま見んなよ？クソ散らかってんの今。｣
｢……ん、｣
その一言で、なんとなくわかっちゃった。送ってくって……言ったのに先生。
散らかってる部屋。先生のたばこの匂い………
有岡｢…よいしょ、っと………｣
ふわって寝心地のいいベッドに下ろされて。一緒に寝てた毛布は取り払われて、そこにあったお布団に包まれたらもう、先生の匂いでいっぱいになる。
ねぇ、どうして今日は、連れ去ってくれたの………？
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1171人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
じゅんぴー(プロフ) - 完結、おめでとうございます。むぎ様のお話は大好きで、いつも楽しみにしています。これからも、むぎ様のペースで頑張られてください！応援してます！！ (2020年6月22日 6時) (
レス) id: d0505f201e (このIDを非表示/違反報告)
のん - 完結おめでとうございます！このお話大好きで、毎回の更新とても楽しみにしてました！読者を待たせることのないペースで更新してくださってありがとうございました！ (2020年6月21日 21時) (レス) id: 36842179d0 (このIDを非表示/違反報告)
有岡担 - 完結おめでとうございます！前作から読ませていただきました。本当にこのお話が大好きなので終わってしまうのはとても寂しい気持ちでいっぱいですが、番外編的なお話を読んで見たいなと思いました。本当に完結おめでとうございます。 (2020年6月21日 17時) (レス) id: a06e75bb6c (このIDを非表示/違反報告)
さっき(プロフ) - 完結おめでとうございます！！最後まできゅんきゅんしっぱなしのお話でした…！！これからも頑張ってくださいね！応援してます(*´-`) (2020年6月21日 15時) (レス) id: 081a71a0e7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆいか - 完結おめでとうございます！いつも楽しく拝見させていただいていました♪作者さんの作品が大好きです！新作も楽しみにしていますね♪これからもずっと応援しています！今までお疲れ様でした！これからも頑張ってください♪ (2020年6月21日 14時) (レス) id: 86d46ef939 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：むぎ
| 作成日時：2020年4月19日 15時
