052 しゃっくり ページ3
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「んっ、…んっ、」
苦しい、
「………も、……やぁ、」
さすがに死んじゃいそうで、絶え間なく食べられる唇を離したくて、先生の胸板を力いっぱい押してみるけど。
後頭部に添えられた手が、少し髪を撫でるだけ。返事もしないで、ただ冷たい視線が刺さる。
「……んっ、やぁ………」
涙が溢れて、何されてもいいって言ったくせに、そんな目で睨まれたらちょっと怖くて。ずっと望んでたキスなのに、やっぱり理想とは違う。
有岡「泣かれてもやめねーよ俺、」
「っ、………」
有岡「……………いつもなら。」
ごめんな、って。名残惜しそうに去っていく先生の唇と、やっぱり離れてほしくなかったなんてわがままを言いそうなわたしの唇。
涙ぐむわたしを見て、ずっと冷たかった視線がふわってゆるんで、一瞬でいつもの先生に戻る。
「ん……、ひっ、く」
有岡「しゃっくり出てんじゃんお前、」
やっぱり子どもだってことなのか。しゃくりあげるわたしを見て、呆れたように笑って背中をトントンしてくれる先生。
「……もっかい、」
有岡「ん?もっかい?」
こくんってうなずいたわたしを、ふふって口角をあげて眺めて、「しねーよ馬鹿。」って優しくよしよしする。絶対ほかの人なら、やめなかったでしょ……
「…、ひっ………」
有岡「ごめんごめん。苦しかったな。」
とんとんって赤ちゃんをあやすみたいな手。こんな近くにいるの、つらくて仕方ないの。
でもそれなら、ロックなんかかかってないんだから、今すぐドアを開けて出ていけばいいのに。
………どうして動かないんだろう。手も足も。
有岡「あーあ………しちゃったな、」
「我慢してたの?」
有岡「んー?」
してたかなぁ?って、子どもに言うみたいに。
バカバカしいって思われたかな。
わたしとのキスなんか、遊びにも入ってないかもしれなかったのに。我慢してたなんてそんなの、嘘だ。
有岡「もう戻れ。ひかが心配するよ。」
「…え、なん」
有岡「さっきコンビニで会ったわ。どーせ一緒に来てんだろうなーって、」
ひかのことも、涼介くんのことも、こんなに頭から吹っ飛んじゃう。
あーこわい、
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じゅんぴー(プロフ) - 完結、おめでとうございます。むぎ様のお話は大好きで、いつも楽しみにしています。これからも、むぎ様のペースで頑張られてください!応援してます!! (2020年6月22日 6時) (レス) id: d0505f201e (このIDを非表示/違反報告)
のん - 完結おめでとうございます!このお話大好きで、毎回の更新とても楽しみにしてました!読者を待たせることのないペースで更新してくださってありがとうございました! (2020年6月21日 21時) (レス) id: 36842179d0 (このIDを非表示/違反報告)
有岡担 - 完結おめでとうございます!前作から読ませていただきました。本当にこのお話が大好きなので終わってしまうのはとても寂しい気持ちでいっぱいですが、番外編的なお話を読んで見たいなと思いました。本当に完結おめでとうございます。 (2020年6月21日 17時) (レス) id: a06e75bb6c (このIDを非表示/違反報告)
さっき(プロフ) - 完結おめでとうございます!!最後まできゅんきゅんしっぱなしのお話でした…!!これからも頑張ってくださいね!応援してます(*´-`) (2020年6月21日 15時) (レス) id: 081a71a0e7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆいか - 完結おめでとうございます!いつも楽しく拝見させていただいていました♪作者さんの作品が大好きです!新作も楽しみにしていますね♪これからもずっと応援しています!今までお疲れ様でした!これからも頑張ってください♪ (2020年6月21日 14時) (レス) id: 86d46ef939 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むぎ | 作成日時:2020年4月19日 15時