060 恋のしっぽ ページ11
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午後からの試合に向けての、お昼休憩の時間。
迷わずやってきてくれた涼介くんに、
「これ………、」
涼介「ん?」
「お弁当……つくったんだけど…、」
今になってなんだか恥ずかしいけれど、ぱあっと花が咲いたような涼介くんの笑顔に、少しだけ胸を撫で下ろす。
涼介「ま、っじで………食っていいの…?」
ごくりと唾を飲んで目をキラキラさせてくれる涼介くんに、大袈裟だよ、と笑いながら。
きっとひかだって、涼介くんの傍にいるほうが幸せになれるってわかってるんだろうな…って。
涼介「うま、!」
「ほんと?」
涼介「うん、超おいしいよ。…ってかもうね、味とかより、Aちゃんが作ってきてくれたってことがもうさ………俺こんな幸せでいいのかな、」
ぱくぱく口に運んでいるように見えて、ちゃんと味わってくれてる。こんなことで幸せを噛みしめてくれるの…?
ねぇ、嫌いになれないよ涼介くん。そんなまっすぐ、素直にぶつかってこられたら。掴めるはずのない恋のしっぽ、追いかけようって決めたわたしを止めないでよ。
……そんな、無垢な瞳で、
涼介「ねぇ、見てた?」
「うん。かっこよかったよ、」
涼介「っ、ちょっともう…泣きそうなんだけど俺、」
「なんで(笑)」
涼介「そりゃ好きな人にかっこいいって、言われたいもん。だからがんばったの。」
卵焼きを頬張りながら嬉しそうに笑う涼介くんを、また嫌いになれないまま。今日も遠ざけるタイミングを失って。
好きにならなくてもいいよ、って。一個下の男の子にどこまで甘えたら気が済むんだろう。もう関わらないでって、そう言えたらいいけど……好きな人がいても思い続けるからって、そんなこと言う子に何言っても響かないような気もしてる。
涼介「超うまかった。ありがとう、Aちゃん。」
「あ、うん…」
ひとつ残らず食べてくれた涼介くんが嬉しそうに笑う。
……まだもう少しだけ、甘えてもいいかな。
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じゅんぴー(プロフ) - 完結、おめでとうございます。むぎ様のお話は大好きで、いつも楽しみにしています。これからも、むぎ様のペースで頑張られてください!応援してます!! (2020年6月22日 6時) (レス) id: d0505f201e (このIDを非表示/違反報告)
のん - 完結おめでとうございます!このお話大好きで、毎回の更新とても楽しみにしてました!読者を待たせることのないペースで更新してくださってありがとうございました! (2020年6月21日 21時) (レス) id: 36842179d0 (このIDを非表示/違反報告)
有岡担 - 完結おめでとうございます!前作から読ませていただきました。本当にこのお話が大好きなので終わってしまうのはとても寂しい気持ちでいっぱいですが、番外編的なお話を読んで見たいなと思いました。本当に完結おめでとうございます。 (2020年6月21日 17時) (レス) id: a06e75bb6c (このIDを非表示/違反報告)
さっき(プロフ) - 完結おめでとうございます!!最後まできゅんきゅんしっぱなしのお話でした…!!これからも頑張ってくださいね!応援してます(*´-`) (2020年6月21日 15時) (レス) id: 081a71a0e7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆいか - 完結おめでとうございます!いつも楽しく拝見させていただいていました♪作者さんの作品が大好きです!新作も楽しみにしていますね♪これからもずっと応援しています!今までお疲れ様でした!これからも頑張ってください♪ (2020年6月21日 14時) (レス) id: 86d46ef939 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むぎ | 作成日時:2020年4月19日 15時