057 言えない ページ8
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涼介くんのゴールがきっかけとなって、勢いのついたチームはぐんぐん点差をつけていった。
光「あれ、戻ってきたの?」
「うん………」
光「ふふ。ちょっと疲れちゃったか、」
……そう。きゃーきゃーする女の子たちに混じって、試合を見るのはもちろん楽しいんだけど。
光「お前、そういうタイプじゃねーもん。」
「…うん、」
光「ほら、見てみ?スカートみじっけーよ。俺Aがあそこまで足出したら泣いちゃう、」
「なんで、?」
光「んー…。さっき後ろからお前のこと見てて、ちょっとしみじみしちゃった。」
どこか急に遠くにいってしまったかのように、ひかが小さく笑う。小さい頃からわたしばっかりで、きっと疲れてきちゃったのはひかのほう。
もう面倒みなくていいよ、ひとりでも大丈夫だよ、何度そう言っても。だーめ。って許してくれないのは、幼なじみのお兄ちゃんみたいな、そういう責任感からだと思ってた。
光「お前のことだから、簡単には大人になんねーと思ってたんだよなぁ…」
「…おとな?」
光「そう。もちろんお前の好きな人の話も今までいっぱい聞いてきたし、ひどいこと言われて、泣いて別れたことも、あったじゃん?」
……あったね。いつも何かあるとすぐに言っちゃうから、きっとわたしのことなんかわたしより知ってるはず。
いつのまにかスタンドの上の方で座ってたひかのところにわたしも来て、何故か遠くばっかりを見る横顔を、その思いを、全部受け止めるくらいの容量がわたしにもあれば。
光「そういう時、いっつも俺んとこ来て泣きじゃくってるお前をよしよししてさ。こいつの面倒見てくために生きんのも、悪くないなって思ってたわけ。」
「…?」
光「ふふ。意味わかんないよね、」
盛り上がる観客席の、ずっとずっと後ろ。
わたしたちのいるところだけが別世界みたいで。
光「やめたほうがいいって死ぬほどわかってんのに、やめとけって言えないんだ。」
「っ、」
ひかの考えていることも、その言葉が指す意味も、とっくの前に気づいてたはずなのに。こんなにバレてるなんて、思わなかったよひか。幼なじみだから何でもわかっちゃうんだねって、傷つけてたことも知らないで。
もう慣れちゃったの?
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じゅんぴー(プロフ) - 完結、おめでとうございます。むぎ様のお話は大好きで、いつも楽しみにしています。これからも、むぎ様のペースで頑張られてください!応援してます!! (2020年6月22日 6時) (レス) id: d0505f201e (このIDを非表示/違反報告)
のん - 完結おめでとうございます!このお話大好きで、毎回の更新とても楽しみにしてました!読者を待たせることのないペースで更新してくださってありがとうございました! (2020年6月21日 21時) (レス) id: 36842179d0 (このIDを非表示/違反報告)
有岡担 - 完結おめでとうございます!前作から読ませていただきました。本当にこのお話が大好きなので終わってしまうのはとても寂しい気持ちでいっぱいですが、番外編的なお話を読んで見たいなと思いました。本当に完結おめでとうございます。 (2020年6月21日 17時) (レス) id: a06e75bb6c (このIDを非表示/違反報告)
さっき(プロフ) - 完結おめでとうございます!!最後まできゅんきゅんしっぱなしのお話でした…!!これからも頑張ってくださいね!応援してます(*´-`) (2020年6月21日 15時) (レス) id: 081a71a0e7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆいか - 完結おめでとうございます!いつも楽しく拝見させていただいていました♪作者さんの作品が大好きです!新作も楽しみにしていますね♪これからもずっと応援しています!今までお疲れ様でした!これからも頑張ってください♪ (2020年6月21日 14時) (レス) id: 86d46ef939 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むぎ | 作成日時:2020年4月19日 15時